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従業員の運動不足とどう向き合う?組織としてできる3つの健康施策

2022/12/15 Thursday
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コロナ禍のステイホームで外出が減ったり、リモートワークで通勤がなくなったりすることで、何かと運動不足が話題になる場面が増えました。

個々人が意識することももちろん重要ですが、会社や組織として取り組めることは何かあるでしょうか?

パーソナルトレーニングスタジオ「b{stoic」の代表トレーナー・鈴木孝佳さんに伺いました。

心身の健康と運動の関係性

従業員の健康は本人にとってだけでなく、組織が成長していく上でも非常に重要です。

健康についてWHO憲章では、「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」と定義しています。
肉体・精神・社会の健康づくりはすべて有機的につながっていますが、まず土台となるのは肉体的健康です。

マズローの欲求5段階説(1.生理的欲求、2.安全欲求、3.社会的欲求、4.承認欲求、5.自己実現欲求)にもあるように、土台には生理的欲求や安全欲求などの生存への欲求が位置します。

これらは肉体的健康と捉えることができますが、精神の健康は肉体の健全性があってこそ良好になります。

想像してみてください。お腹の調子が悪い時や風邪を引いている時、心は安らいでいるでしょうか?おそらく、何かしらの波が立っているかと思います。

私たちの感情は神経伝達物質の影響を大いに受けており、神経伝達物質は睡眠や食事、そして特に運動によって生成されます。つまり、心の健康も健全な肉体的活動に影響されるということです。

そういった意味でも、肉体的・精神的健康をつくるのに運動は欠かせないものであると言えます。

ゴロゴロしてしまうのは生存本能として当然

では、あなたは毎日運動をするでしょうか?運動は好きでしょうか?

実は、私たちヒトは、基本的に運動を好んで行うようにはできていません。

食欲・睡眠欲・性欲など、生物の基本目的である「遺伝子を残す」ための行為は理由なく行うように設計されています。しかし、運動は異なります。むしろ、やらないようにできているのです。

前回の記事でも、私たちの身体スペックは1万年前から変わっていないというお話をしました。永らく人類は、食べ物が安定的に手に入らない状況が続いていました。日本に住む今の私たちのように、好きなものをいつでも自由に食べられる状況は、ここ数十年のこと。つまり、永らく人類は飢餓との戦いだったのです。

飢餓を防ぐためにできることは2つです。

1. 目前に食べ物があれば、余すことなく食べる
2. 余計なエネルギーを使わない

そうです。2こそが、ヒトが運動をしないように設計されている理由です。
家でゴロゴロするのを好むのは、生存本能からすると当然なのです。

となると、運動を好んでやったり習慣化したりするには、別の理由が必要になります。それこそが、従業員に運動を行ってもらうヒントにもつながります。

運動を習慣化する2つの方法

まずは、運動を習慣化するために有効な2つのことを紹介します。

1つは、「運動の恩恵を知ること」です。

運動後、脳内では即時的に変化が起きますが、肉体や精神にはっきりと好影響が出てくるのはしばらく先です。つまり、食や睡眠と違って、報酬を実感できるまでにラグが生じるということです。(運動の種類によっては直後から感じられることもあります)
これが運動を続けづらい理由です。

そこで鍵を握るものが「知識」です。

この運動が「いかに自分に良い影響をもたらすのか」「いかに重要なのか」を理解することは、運動の価値を補完します。

また、体の変化には必ず脳の変化(神経細胞同士の新たなつながりやつながりの強化など)が伴いますが、脳の変化は行動がいかに重要かを理解することで促進されます。

知識は、行動を続けるための強力なサポートになります。知る機会をつくり、知識を増やすことが大切です。

もう1つは、「運動と快感を紐づけること」です。

運動自体には、ドパミン・セロトニンといった神経伝達物質の分泌を促進する作用があります。これは大昔、狩りには走ることがつきものであり、走る行為の先に獲物を得るという快楽があったため紐づけられたと言われています。

ただ、運動することを苦なく続けられる人は良いのですが、多くの人は強い動機がない限り続けられません。

そこで、運動に楽しさや気持ちよさ、達成感などを紐づける仕組みを取り入れると継続しやすくなります。

たとえば、運動をするとポイントがもらえるとしたらどうでしょうか?少しモチベーションが上がる方もいるのではないでしょうか。最近は、移動距離×移動手段でポイントがつくサービスやアプリがあるので、そういうものを活用するのも手です。
また、運動をイベントごとにして、勝敗をつけたり、チーム対抗戦にするという要素を加えることで楽しさを創出することもできます。

運動を継続できる仕組みがうまく回り始めると、自分の可能性を感じられる自己効力感も高まります。それによって、さらに行動してみようと前向きになり、運動に限らずチャレンジ精神が育まれます。

組織が取り組める運動不足解消の施策3つ

個々人が運動に対する意識を持つことも重要ですが、組織としてできることはなんでしょうか?

実際に、私が働くトレーニングスタジオで取り組んで効果が出たものを中心に3つの施策をご紹介します。

1.歩数イベント

まず、簡単に取り組めるものとしては、チームごとに歩数を競うイベントを開催するのがおすすめです。

最近では、歩数を自動的に管理するアプリやデバイスが多くありますので、始めやすい施策でもあります。

歩行による健康効果に加えて、イベント化することでコミュニケーションが生まれ、社会的交流(社会的健康)も加わります。また、事業部間を越えてチーム分けをしてチームで競うイベントにすれば、新たな人間関係が生まれることにもつながるかもしれません。身体だけでなく、脳にとっても良い刺激となる施策です。

2.定時開催のグループセッション

週に数回など、会社として決まった時間に短時間の運動機会を設けるのも有効です。

オンラインで実施すれば、リモートワーク・出社を問わずに参加可能です。ストレッチコース・プチ筋トレコース・呼吸コース・ヨガコースなど運動の中身を変えると、多角的に身体へ刺激を与えられますし、参加者の飽きを防ぐこともできます。

弊社でも企業へ向けたサービス「Office Conditioning(※)」を展開しています。さまざまなバックボーンを持つ専門家をアサインできるのが特徴で、好評をいただいています。

※「Office Conditioning」
運動・食事・休養の側面から心と体を整え、組織のパフォーマンスのベースアップを行うサービス。オフィスで和気あいあいとコミュニケーションをとりながら行うコンテンツや、オフィスに治療家を呼んで身体の不調を改善するコンテンツ、オンラインを活用して1on1コーチングでじっくり自身と向き合うコンテンツまで幅広くそろえており、組織の課題に合わせてオーダーメイドにプログラムを作成。
Office Conditioningへのお問い合わせ先はこちら

3.健康リテラシー向上研修

体に関する知識を高めるための研修を定期的に設けるのも良いでしょう。

前述の通り、運動の意義・効能を知ることは「運動しよう」という行動立ち上げのために重要です。

また、全員で同じ知識を得ることで共通言語が生まれ、互いに気遣えたり、健康に関する会話が生まれやすくなります。テーマには運動以外のことを含めることもできます。たとえば弊社では、専門家を招いて男性が女性の体調について学んだりなど、体に関する理解を深める取り組みを実施しています。

他にも組織として取り組めることはありますが、大切なことは、取り組みが働き方や企業文化にマッチしていることです。

まずはいろいろ試してみて、従業員の声を参考にしながら推進していくと、最適解が見つかるかもしれません。

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鈴木孝佳TAKAYOSHI SUZUKI

パーソナルトレーニングスタジオ「b{stoic」代表トレーナーで、姿勢と不調を改善する専門家。アスリートやアーティストをはじめ、1万人以上の身体に関わる。トレーニング指導・姿勢オンラインサロン・企業講演・専門家育成セミナー・書籍執筆・メディア監修を中心に活動。著書に『疲れない体を脳からつくるボディハック』『全⼈類、背中を丸めるだけでいい』『ねこ背を10秒で改善して⼈⽣を変える』等。

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