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「インボイス制度」最新情報!申請期限の延長、他3つの変更を解説

2023/03/07 Tuesday
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導入が決定されてから、企業の経理部門や個人事業主を中心に議論を巻き起こしている「インボイス制度」──実情では、個人のインボイス登録申請は十分に進んでいません。

そんななか、2022年12月に閣議決定された「2023年度税制改正大綱」で、インボイスにまつわる負担軽減措置が4点盛り込まれました。本記事では、具体的な変更点についてお伝えします。

個人事業主のインボイス登録は現状4分の1以下

以前の記事「消費税のルールが変わる、インボイス制度。企業側がおさえるべき点とは?」では、インボイス制度の概要をお伝えしました。東京商工リサーチの調査(※1)によると、2022年12月末のインボイス登録件数は約200万件で、法人の登録率は8割を超えました。一方、個人事業主は23.7%といまだ低水準。煩雑な事務作業が増えると考えて、様子見をしている個人事業主が多いようです。

※1:東京商工リサーチ「インボイス制度 全体の登録率が50%超す、個人事業主は23.7%と登録遅れが鮮明に」(2023年1月16日発表)

「インボイス制度」変更ポイントは4つ

こうした実態を受け、売り手・買い手双方の税負担・事務負担を減らそうと、制度の軌道修正がなされました。大きな変更点は4つです。

1.インボイス登録申請の期限が、半年間延長に

免税事業者が登録申請をして課税事業者になる場合の期限が「2023年9月30日まで」に変更されました。もともとインボイス制度開始の10月1日を登録開始日とする場合の申請期限は「2023年3月31日」とされていたため、実質的に半年間延びた形です。個人事業主にとっては、課税事業者になるかどうか検討し準備するための時間的猶予ができたと言えます。

なお、登録申請書を提出してから登録通知が来るまでの期間は、e-Tax提出の場合で約3週間、書面提出の場合で約2ヶ月(※2)とのこと。あくまで目安なので、期限が延びたとはいえ、慌てないように余裕をもって準備しましょう。

※2:国税庁 令和5年1月12日「適格請求書発行事業者の登録件数及び登録申請書の処理期間について

2.免税事業者が課税事業者になった場合、納税額は売上税額の2割でOK

インボイス制度開始から2026年9月30日までの3年間は、売り手が納付する消費税額は「受け取った消費税の20%でよい」(8割の仕入税額控除を受けられる)ことになりました。
例えば、100万円(税抜)の商品を110万円(税込)で売ったとき、受け取る消費税は10万円ですが、今回の経過措置によって納税する消費税額は10万円の2割、つまり2万円で済むこととなります。

この制度を適用する条件は、売上・収入を税率ごと(8%、10%)に把握することだけ。事前の届出などは不要で、消費税の申告時に適用するかを選択すればよいので、使い勝手のいい制度と言えるでしょう。ただし、2023年10月1日よりも前から課税事業者になっている事業者は対象外です。

3.少額の場合は「返還インボイス」交付が不要に

インボイス制度では、売り手は商品の返品や値引きなどにより買い手へ売上の一部を返還するとき、返還インボイス(適格返還請求書)を交付する必要があります。ただし、返還額が1万円未満(税込)の場合は、返還インボイスの交付が免除されることになりました。これは経過措置ではなく、恒久的な変更です。

具体的には、例えば、日本の商習慣でよくある「銀行の振込手数料を売り手側が負担する場合」に影響があります。買い手が振込手数料の金額分を割り引いて銀行に振り込む場合、売り手は値引額などを記載した「返還インボイス」を交付する必要があるとされていました。振り込みの度にこの処理が生じるのは煩雑だという指摘があり、変更に至りました。

4.少額取引はインボイスが不要に

条件を満たす中小事業者は、1万円未満の課税仕入れについて、インボイスを入手・保存していなくても帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けられることになりました。

条件とは、基準期間(2年前)の課税売上高が1億円以下または特定期間の課税売上高が5000万円以下であること。全事業者の90.7%が対象となりうる(※3)とされています。

※3:財務省「インボイス制度の改正案に関する資料

もともとは、取引の金額に関わらずインボイスの受領・保存が必要とされていました。この規定により、備品や資料など少額のものを仕入れたときはインボイス無しでOKになったので、事務作業上の負担はかなり減ることでしょう。ただし、この変更はインボイス制度開始から6年間の猶予措置となっています。

さらに、補助金の拡充も決定

これら4つの負担軽減策に加え、補助金の拡充も決まっています。例えば、中小事業者向けには「IT導入補助金」のうち「デジタル化基盤導入枠」の下限額(5万円)が撤廃されました。会計ソフトや受発注ソフトの購入費などが対象となります。安価なサービスも増えている今、下限額の撤廃は嬉しい変更です。

また、免税事業者だった小規模事業者がインボイス発行事業者に登録した場合、「持続化補助金」の上限額が、一律50万円加算されます。もともと50~200万円に設定されていた補助金が、100~250万円の幅になります。対象となるのは、税理士相談費用や機械装置導入、広報費など。対象者であればぜひ活用しましょう。

2022年からいろいろな意見が飛び交うインボイス制度ですが、今回の変更により事務負担が少し軽減されます。

お金が絡む経理分野は、あいまいな対応でごまかしてしまうと後々大きな事故につながりかねません。事業や売上規模、取引先の性質などを踏まえて、具体的にどのような請求書が必要になるのか考え、フォーマットを用意しておくと安心でしょう。

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さくら もえMOE SAKURA

出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。

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