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「週休3日制」が組織に与えるメリット、デメリットと3つの導入パターン

2024/06/18 Tuesday
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日本でも徐々に広がりつつある「週休3日制」。多数の民間企業が導入しているほか、最近では地方自治体でも取り入れる例が出始めています。新しい働き方の選択肢となる週休3日制ですが、組織や経営者にとってもいろいろなメリットがあります。デメリットへの対策と合わせてまとめました。

日本企業や自治体にも広がる「週休3日制」

厚生労働省の調査によると、「完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度」を取っている企業は、2023年調査で7.5%でした。全体から見れば少数であるものの、確実に広まりつつあるといえます。

民間企業では、例えばリクルートやパナソニック、日立製作所、日本マイクロソフト、ファーストリテイリング、日本IBM、ファミリーマートなどが導入しています。みずほフィナンシャルグループは「週休4日制」も許可したり、レゴランドは週休3日制を導入した上でさらにその導入パターンを社員が選択できるようにするなど、独自の制度設計をしている企業もあります。

また最近は、自治体でも導入事例が増えつつあります。茨城県では、2024年4月から選択的週休3日制を導入。千葉県も、知事部局の全職員を対象に、2024年6月からスタートしました。前橋市や宇都宮市、久慈市なども続々導入し、自由度の高い働き方を追求しています。

週休3日制の導入により、社員は、育児や介護との両立や、リスキリング、副業のための時間を確保することなどが可能になります。ライフスタイルや生き方が多様化する中で、より自分に合った働き方を選べるように選択肢をつくることで、社員の働きがいやモチベーション、帰属意識を上げるための施策です。

※1出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況

週休3日制の導入パターン3つ

ひとことで週休3日制といっても、その具体的な導入パターンはいくつかあります。

まずは、1日あたりの労働時間を増やし、全体の労働時間も給与も維持する「圧縮型」。1日8時間ずつ週5日勤務していたものを、1日10時間ずつ週4日勤務とするイメージで、労働時間も給与も減らないぶんハードルが低いといえます。

次に、勤務日数に応じて総労働時間が減り、その分給与も減る「報酬削減型」。この場合、給与のマイナス分を補填するような工夫が必要になるでしょう。

最後に、週あたりの勤務日数を自由に選択する「フレキシブル型」です。業務の繁忙期と閑散期が明確に分かれている職場や、社員の自律性が強く重視される企業に向いています。

マイナビが正社員900人を対象に行った調査(※2)では、収入が減る場合は「週休3日制を利用したくない」が66.8%、収入が変わらない場合は「利用したい」が76.8%という結果になりました。週休3日制の活用は、収入の増減に大きく左右されることがわかります。

なお、同調査によると、週休3日制で働く人のうち収入が「上がった」は50.4%、「下がった」は17.9%でした。勤務先からの給与収入が減っても、空いた1日で副業するなど工夫して、結果的に収入が上がるケースは珍しくないようです。

経営者が週休3日制を導入する際には、社風やマネジメント体制、職場の雰囲気などに合ったパターンを選ぶことが必要です。収入が減らない制度設計にするか、または週休3日制と合わせて副業を解禁し、社員の収入補填を後押しするなどの工夫が必要でしょう。

※2出典:マイナビ「週休3日制に関する意識調査(2023年)

人材定着の一手にも!企業から見たメリット2つ

では、週休3日制を導入することで、企業にはどんなメリットがあるのでしょうか。

人材の獲得・定着に役立つため人手不足の解消に有効

まずは「人材の獲得、定着につながる」点です。各業界で人手不足が深刻化している中、自由度の高い魅力的な労働環境は、採用市場で大きな武器になるでしょう。実際、上述のマイナビの調査(※2)によると、週休3日制を導入している会社に「転職したい」人は63.4%いることがわかります。

また、同調査によると、週休3日制の導入によって「3年以内の退職意向」が、男性は3.5ポイント、女性は8.6ポイントそれぞれ減少することがわかっています。優秀な人材を獲得する観点でも、社員を定着させる観点でも効果があることがわかります。

例えば、2024年4月に始まった時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」に悩まされている建設業界や物流業界、人材定着率が低いとされる介護業界でも週休3日制が注目されています。人材不足が深刻な中、週休3日制によって職場の魅力を上げ、労働力確保に役立てようとする狙いです。

また、若い層は顕著に週休3日制に興味を示しています。マイナビが2025年3月卒業予定の全国の大学生・大学院生1,108名を対象に行った調査(※3)によると、週休3日制の企業に「就職してみたい」割合が63.0%を記録しました。2024年卒の学生と比べても3.0ポイント増加しており、週休3日制が広く支持され、学生の興味を引いていることがうかがえます。

※3出典:マイナビ「マイナビ 2025年卒 大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(12月)

業務効率化が進む

勤務時間が減る分、短時間で業務を回すために無駄をなくす必要が生じ、おのずと業務効率化が進むというメリットもあります。

週休3日制を導入する場合、まずは業務の棚卸しが必要です。そのうえで、例えばリモートワークを活用して移動時間を減らしたり、業務フローを再構築したり、生成AIをはじめとする最新テクノロジーを使ったりと、業務効率化に向けたさまざまな施策が考えられます。

週休3日制によって社員のモチベーションが上がったり、リスキリングによるスキルアップを見込めることも、業務効率アップにつながるでしょう。

経営者が認識しておきたい、2つのデメリットと対策

大きなメリットがある週休3日制ですが、デメリットもあります。2つの主なデメリットと、考えられる対策をまとめました。

残業時間が増えてしまう可能性がある

週休3日制で勤務日数が減ると、1日あたりの仕事量が増え、残業時間が増える可能性があります。とくに、全体の労働時間も給与も維持する「圧縮型」の場合、1日あたりの労働時間がかなり長くなってしまうリスクがあります。また、週休3日制を使わない社員にしわ寄せがいき、業務量に偏りが生まれることも考えられます。

労働時間が伸びると、社員の心身の健康に悪影響を及ぼしかねません。また、かえってモチベーションが下がることもあるため、対策が必要です。

とくに有効なのは、一部の業務を切り出してアウトソーシングする「BPO」や、特定の部署のビジネスプロセスを丸ごと外部のプロバイダーに委託する「BPaaS」です。セキュリティを担保しながら業務負荷を下げることができたり、業務整理を行なってもらったりすることもできます。また、人材を再配置してコア業務にリソースを集中させることもでき、組織改善が見込めます。

勤怠管理など、バックオフィスのタスクが増える

週休3日制を導入している組織の多くは、社員が週休2日か週休3日か選べる「選択的週休3日制」の形式をとっています。このため、社員によって週休の日数が異なり、勤怠管理や給与計算が複雑になります。

これまで全員が週休2日制だった企業は、勤怠管理のシステムごと見直す必要があるでしょう。週休3日制の検討をきっかけに、BPOなどを使って、勤怠管理やその周辺のバックオフィス業務を外部に委託するのも有効です。

人材獲得・定着の面からも、自社の強みになりうる週休3日制。想定されるメリットとデメリットを見比べながら、導入を検討している経営者は多いでしょう。重要なのは、想定されるデメリットをうまくカバーする方法を見つけることです。社内でできる対策を考え、必要に応じて、外部のサービスを検討すれば、週休3日制の実現へ一歩踏み出せるのではないでしょうか。

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さくら もえMOE SAKURA

出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。