interview インタビュー

サポーターズがハイブリッドワークを選ぶ理由。「対話」が生む価値とは

2023/08/03 Thursday
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出社型・リモートワーク型・ハイブリッドワーク型など各社がさまざまな働き方を採用している昨今。組織としてのパフォーマンスを最大化させるために試行錯誤をする経営層・マネジメント層も多く見られます。

『Alternative Work』を運営する株式会社キャスターのサービス「在宅派遣」や「Reworker」を利用する株式会社サポーターズでは、現在はハイブリッドワークを採用しているとのこと。取締役・田中宏征さんに、ハイブリッドワークを選んでいる理由や組織づくりで重視していることについてうかがいました。

株式会社サポーターズ
次世代のエンジニア育成を目指す「技育プロジェクト」やエンジニア職に特化したキャリア支援・就活支援を中心とする事業を展開。

在宅派遣

フルリモート専門の人材派遣サービス。働く場所を制限しないことで、いま必要な人材を、全国からフルリモートで採用できます。

Reworker

リモートワーク特化型の求人メディア、人材エージェントサービス。正社員から派遣社員、パート・アルバイト、業務委託、副業人材まで幅広い求人を募集することが可能です。

「会いたい」に応えるためにハイブリッドワーク型へ

ーー前編のインタビューでは、多様性が活きるサポーターズで大切にされている「組織のマインド設定」について伺いました。今回は、具体的な働き方や組織づくりにおける取り組みについてうかがいたく思います。
今、サポーターズでは、出社/リモートワークなどどのような働き方をされていますか?

田中:もともとは全員出社する働き方だったのですが、キャスターの「在宅派遣」のサービスを利用して在宅で働く派遣社員のメンバーを迎えたところから、リモートワークを取り入れるようになりました。業務特性によって、場所や時間を合わせて同期型で働く必要があるものとそうでないものに分けられると思ったんです。

たとえば、営業職なら早くレスポンスをすることが大事だったりするので対面の方がスムーズな場面が多いですし、エンジニアやデザイナーなら常に対面でなくてもまとめて手を動かせばよいケースが多いですよね。

また、より良い人材を確保するという意味でもリモートワークや「在宅派遣」を活用しようという決断になりました。

その後、コロナ禍もあって2020年2月くらいからは全員フルリモートワークで働くようにもなって、その働き方の変化自体には違和感もなく、難しさも感じていませんでした。コロナ前からリモートワークを取り入れていたので、むしろ世の中が合わせにきたなという感じでしたね。

ただ、これは他社でもリモートワークの話題の時によくあがりますが、フルリモートワークの働き方が合わずにメンタルヘルスの不調が出てきてしまったメンバーがいたんです。家庭があって家で日常的にコミュニケーションが発生している人はいいんですが、一人暮らしで一切外に出なくなってしまったみたいな人はメンタルを崩してしまう人もいます。

そういう状況から人によっては「会いたい」という人もいるので、そういう「会いたい人が会いに来られる場所」は必要だなと考えて、現状ではリモートワークと出社を組み合わせたハイブリッドワーク型を取り入れています。

「会社に来てよかった」と思えるインセンティブを用意できているか

ーー人によって心地いい働き方はさまざまですもんね。「会いたい人が会える場所」を設けたことで、どんな価値が生まれていますか?

田中:僕自身、オフラインで会った後の方がパフォーマンスが良くなるというのは実感としてあります。

毎日じゃなくても、1回一緒にご飯を食べてから働いたりすると、なんかうまくいくんですよね。たとえば、テキストコミュニケーションではキツイ印象があったとしても、リアルで会ってみたらそんなことなかった、筆不精なだけだったとか、そういう気づきもありました。

だから、僕は全国の拠点に出張に行くなど、積極的にメンバーに会いに行くようにしています。たとえば、以前、サポーターズのコールセンター業務等を受け持ってくれていたBPO先のメンバーに会いに行った時は、会った後の通電率や成約率が極端に上がったんですよ。

やっぱり、一緒に働く仲間がどんな人なのか知るのはとても大事なことですよね。

ただ、「なんとなく一緒に居た方がいいでしょ」「とりあえず出社して、リアルで顔を合わせておけばいいだろう」という考えでは何も生まれません。出社を強要するのではなくて、経営者が従業員に「出社したいな」と思わせるインセンティブのようなものを用意することも重要だと思います。

金銭的なものというより、「出社して仕事がうまくいった」というような成功体験がないと、従業員が「家でやればいいじゃん」とか「雨だから家出たくないし」という考えになって当たり前ですよね。それでも、「オフィスへ行きたい」「今日は会社に来てよかったな」と出社に対してポジティブになれる組織づくりがこれからは求められると思います。

ーー会社へ行くことがポジティブに受け取られるために、たとえばどんな工夫が考えられますか?

田中:サポーターズでは、定期的にイベントを開いています。全社では年に1回忘年会のようなものを開催して「ハズレなしの賞品付き」企画をやったり、チーム単位では節目ごとにお疲れさま会をやったり。社員・派遣社員・業務委託など契約形態を問わず、全国各地にいるメンバーには経費を会社で負担して「東京で集まりましょう」と呼びかけています。

もちろん、ある程度の経費はかかりますが、それがきっかけで1つでも仕事の成果につながれば十分だと思っているので、渋るところではないと考えています。

ただ、単純にレクリエーションとして消費されてしまうのではなくて、運営側がどのようにストーリーを作るかが重要です。東京に集まった人たちがどういう経験をして、その経験をしたことでそれぞれの拠点に戻った後にどういうふうに仕事に繋げられるか──そこまでデザインすることがすごく大事だと思うので、コンテンツ1つひとつや細部にまでこだわっています。

たとえば、忘年会の当日にオフィスに行ってみたらまだ誰も来ていなかったという状況があると印象として台無しなので、運営メンバーには「1時間前にはオフィスにいよう」とか「地方から来たメンバーが働けるスペースも準備しておこう」「綺麗にしておこう」など、小さいことを徹底しています。

また、歓迎の気持ちを表すという意味では「あだ名文化」というのもあります。元からいるメンバーが新メンバーのあだ名を30個くらい考えて、そこから選んでもらうんです。ちなみに、僕のあだ名は「ピロ」です。距離感を縮めたり、「あだ名の由来って何?」というところからその人を知ったり、コミュニケーションを取るためのきっかけになればと思っています。

ただ、この文化も最初から戦略的に導入したというよりは、後からついてきたという感じです。サポーターズはもともとフランクな組織なので、後から入社してくる人が身内の壁を感じて逆に馴染みづらいという状況が起こらないように、こういう文化ができました。今ではあだ名文化が浸透して役職に関わらずあだ名で呼び合っていますが、契約や手続きなどで本名を言われると認識できないことが増えてきて、困ることも少しあります(笑)。

組織は個の集合体。個との対話こそが要

ーー「歓迎されている」と感じられる素敵な工夫をたくさんされているんですね。
メンバーとの関わり方で田中さんが意識されていることはありますか?

田中:一番重視しているのは「個との対話」です。僕はサポーターズの取締役として組織と向き合う傍ら、親会社(CARTA HD)のコーポレートブランド室の室長としても会社のカルチャー醸成と向き合っています。室長として、CARTAに所属する20以上の事業会社、1400人のメンバーを1つのチームとして意識づけようとしていますが、「この一手ですべてが変わる」みたいなことってなくて。文化や組織も結局は個の集合体なので、変えていくには個と向き合うしかないと思っています。それが結果的に組織と向き合うことに繋がると思うんです。

たとえば、経営を船に例えたときに、「北に行きたいから、北に行くぞ」と行って皆の方向を変えるより、「皆の声を聞いた結果、〜〜〜だから北に行きたいんだよね」と納得できるように伝えながら導くのがリーダーシップだと思っています。

そのためには、個と対話を重ねて、「どういう人なのか」「どんなことを考えているのか」「何を目指しているのか」「今やろうとしていることにはどんな意味があるのか」などを語り合う場をたくさん作るしかありません。

制度や仕組みを作ることももちろん重要ですが、それと同時に、その仕組みが円滑に回るサイクルを作れるようにトップ自らが個々のメンバーに対してエンジンをかけにいくことがとても大事だと考えています。そこは部長やチームリーダーに任せるのではなく、経営層が仕組みづくりも個々のメンバーとの対話も両方やることが必要だと思いますね。

ーー両輪を回していくということですね。それにしても、個々の「対話」に相当なリソースを割かれているんですね。

田中:そうですね。でも、これだけの人を動かすということは、それだけの人生を背負うことでもあるので、銀の弾丸みたいな解決策は求めてはいけないと思っています。

組織の調子がいいときはいいですが、そうでない時は、歯を食いしばって一緒に頑張ってくれる仲間がいるかどうかが頼みの綱です。だから、1対1の対話の積み重ねでメンバーのエンゲージメントや熱量を引き上げて、波に強い組織を作っていきたいと思っています。

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さくら もえMOE SAKURA

出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。

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