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賃上げ、インフレ時代に経営者に求められる「技術」とは

2023/07/19 Wednesday
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先日、6月の企業物価指数が発表されました。

参照記事:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230712/k10014126231000.html

我々のような会社だと、いわゆる仕入れのようなものはないのですが、それでも使っているソフトウェアなどが軒並みここ数ヶ月で値上げしたりしています。それ以外にもオフィスを持っている会社を経営している知人から聞くと、やはり電気代などはかなり高くなっているとのことで、会社を運営するコストは上がっているのではないかと思います。

一方で、最も今集めるのが難しい、つまり貴重な経営資源と言えるのが「人」です。その「人」に集まってもらうためには、賃上げや働き方の整備などに投資していく必要がありますが、これはなかなか容易ではないことは確かです。

電気代や原材料費は毎月変動しますし、仕入れの値段も定期的に変わります。例えば食品であれば、それに合わせて小売価格を変動させていくことで利益を確保していくことはまだやりやすいです。ただし、人件費は固定費になりますし、一度上げたものを物価が下がったからといって下げるわけにもいきません。それは、働いている人の不安にもつながってしまいます。

アメリカなどは小売業やサービス業で物価高に合わせて、時給もガンガン上がっていますが、それは解雇のしやすさや法律が違うことが大きいです。日本では、一度挙げた人の給与を一気に下げることはできません。判例でも1回で10%程度の減給くらいが許容されている例だし、その場合でもかなり合理的な理由が必要です。

大胆に一時的な物価指数の高騰に合わせて賃上げも同時にできるかと言われると、現実的に難しい舵取りになると思っている経営者も多いのではないでしょうか。もし、仕入れが4%上がった中で賃上げすることを考えると、例えば販売価格を10%くらい上げていかなければ実現できません。しかも一度ではなく、値上げし続ける必要があります。

それくらい今の時代の経営において大切なのは「高く売る戦略や技術」、そしてその時に考えないといけないのは「誰に売らないか」です。

例えば、販売価格を倍にして顧客が半分になったとしても、実は売り上げは変わりません。でも、顧客が半分になれば従業員も仕事に余裕が出るので品質が上がるかもしれないし、残業時間が減ってコストが下がることになり、賃上げの余地が出てくるかもしれません。しかし、それは結果的に生産性が上がったからできることです。

これを顧客も増やしつつ、かつ単価も上げようとすると無理が出てくるし、むしろお客さんを増やすことに注力し続けて、単価を上げることに対して力を注いでいない会社が多い傾向にあります。もちろん顧客が増やせればいいですが、平成の時代にそれをやり続けた結果、生産性が上がらず、給与が上がっていないわけで、やり方を根本的に考え直さないといけません。

やはり生産性を上げる必要はありますが、生産性というのは少ない投入量で多くの成果を生むことです。そう考えると、実はたくさんのお客さんに売るという数の勝負ではなく、高く買ってくれる人に売ることを必死に考えないといけません。

そして、それを実現するには「お客さんを選ぶ、価値がわからない人には売らないという考え方にいかにシフトできるか」なのではないかと思います。

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※この記事は、2023年7月時点の情報をもとに執筆しております。

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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA

働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。

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