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Web会議は顔出し必須?画面オフでもOK?音声は顔より嘘がつけない

2022/08/02 Tuesday
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リモートワークでWeb会議が増え、Web会議ならではの新たなマナーが生まれています。そのなかでも「顔出し」においては、必須、もしくは必須とまではいかなくても推奨している企業の方が多いだろうと思います。

実は本メディア『Alternative Work』を運営する株式会社キャスターでは、社内のWeb会議において顔出しは必須ではありません。むしろ、画面オフでいることを推奨しています。画面オフにすることでメイクしなくていい、背景で家の中が見えなくていいなどの理由もありますが、セキュリティに気をつけていればどこからでも働けるリモートワークのメリットを最大限に活かすことが目的でした。

ただ、社会的には顔出し必須派も多く、意見が分かれるところでもあります。
Web会議に限らず「直接顔を見て話すことで真意や感情が伝わる」と言った意見は根強くあります。たしかに、直感的には顔を見て話すことがコミュニケーションにおいて重要な気がしてきます。

そこで、今回はこの疑問に関する研究をお伝えしたいと思います。

その研究は、米・イェール大学の心理学者マイケル・クラウスの研究で、この調査はアメリカ心理学会発行の学術誌『アメリカン・サイコロジスト』に発表されたものです。

研究内容はこちら

クラウスは1800人以上を対象に実験を行いました。
最初の実験では、複数の友だちがニックネームについてからかい合う様子が映った短いビデオを見てもらいます。グループは3つに分けられており、1つは「音声と映像」があるビデオ。もう1つは「音声のみ」のビデオ。もう1つは「音声のない映像のみ」の3つです。

ビデオを見た後に、そこに登場したそれぞれの人物が、「楽しい」「恥ずかしい」「怖い」「悲しい」など23種類の感情について何をどれだけ経験していたと思うか、0から8の点数を付けるように指示をします。
その結果、なんと「音声だけ」を聞かされた参加者が最も正確に登場人物の感情を当てられたというのです。

次の実験では、イェール大学の学生に好きなテレビ番組や映画、食べ物や飲み物などについて話してもらいます。最初は部屋は明るいまま、次は部屋を暗くして同じような内容の話をしてもらいます。
その後、会話をした際の自分の感情と相手の感情について点数を付けてもらったところ、なんとこちらでも暗い部屋でお互いが見えなかったときの方が、相手の感情を正確に読み取れました。

つまり、感情を正確に把握するためには、顔の表情はむしろバイアスになり得るということです。クラウスは表情に比べて音声は嘘をつけないし、感情を伝えるには「何を言うかではなく、どう言うか、ということだ」と述べています。

日常の仕事に当てはめて考えてみると、思い当たる節がないとは言い切れません。

会議中に上司がブスッとした顔をしていたら、普通のフィードバックも「怒っている」ように聞こえるかもしれません。また、どんなに厳しい指摘でも柔和な表情で言われたら厳しいことを言われたように感じないかもしれません。
意識するかしないかに関わらず、私たちは相手の表情から感情を読み取ろうとしてしまうものだと思います。

だからこそ、あえて会議で「何を言ってるか」に集中したいとき、相手の表情に左右されず自分の意見を言いたいと思うときなどは画面オフにして会議をしてみると今までと違う結果になるかもしれません。

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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA

働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。

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