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リモート時代のマネジメント。1on1に見る“コーチングの本質”とは

2022/11/10 Thursday
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「リモートワーク環境でのマネジメント方法が分からない」という声がよく聞かれます。マネージャーとメンバーが1対1で話す「1on1」が有効とも言われますが、メンバーとどのように話し、何を聞き出せばいいのでしょうか。

本記事では、10月25日に『Alternative Work』が主催したイベント(登壇:株式会社mento代表取締役・木村憲仁、株式会社キャスター取締役CRO・石倉秀明)をもとに、対談記事にまとめました。

木村憲仁
コーチングサービス「mento」を展開する、株式会社mento代表取締役。2014年、リクルートホールディングスへ入社後、販促領域のプロダクトマネージャーを4年半務め、消費者向けのサービス開発を牽引し事業成長に貢献。2018年に株式会社mentoを創業し、個人・法人向けにサービスを展開。延べ2万時間以上のコーチングセッションを提供し、ミレニアル世代のビジネスパーソンの成長を支える。

石倉秀明
約1500名がフルリモートワークする株式会社キャスター取締役CRO(Chief Remotework Officer)。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABAMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。妻と6歳の娘と犬と猫と暮らしている。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。

実は間違った「1on1」をしてるマネージャーも多い?

木村:コロナ禍でリモートワークが加速したこともあり、部下やチームのマネジメントに悩む人は増えているなと感じます。昔ながらのやり方では、もはや通用しない時代ですよね。コーチングサービスを提供している当社にも、企業の人事の方から「若手社員のエンゲージメントを保てなくなった」「離職が続いている」「モチベーションが下がっているようだが、どうしたらいいか分からない」みたいな悩みが寄せられます。

石倉:我々も「リモートワークで、どうやってメンバーとコミュニケーションを取り、関係性を築けばいいか分からない」みたいな悩みはよく聞きますね。プロジェクトマネジメントでは「部下の仕事の進捗が見えない」「会議ばかりで生産性が上がらない」とか。共通してるのは、コミュニケーションが業務連絡ばかりってことじゃないですかね。業務指揮命令比率100%みたいな。情報伝達ばっかりで、会話らしい会話が1日の中でほぼ0%って状況では、当然いい関係性を築くのは難しいですし。

木村:最近だと1on1をやっている会社が多いですが、やり方が上手じゃなかったり、会社からやってくれと言われるからやっている、みたいなパターンもよく見かけますね。でも、実際はマネージャーがちゃんと1on1の方法を知らないと、ただの業務進捗の確認になってしまったり、根回しの場にしかならないなと。1on1に特化した管理ツールとかテンプレ質問集も出てきていますが、それくらい頭を抱えているマネージャーが多いんでしょうね。

石倉:1on1って難しいですよね。僕も、部下との1on1は実は苦手で、冒頭から「最近どう?」って聞いちゃう、最悪のパターンをいつもやっちゃってます(苦笑)。採用面接とか評価面談には慣れていても、1on1は進め方が分からないままとりあえずやっている、ってマネージャーも多いんじゃないですかね。

木村:そうですね。1on1好きなマネージャーって、あんまりいないと思います(笑)。業務の話題ばっかりで結果的に“詰める”雰囲気になってたり、フォーマット使って“台本読み状態”になってたり。僕は、リアルにしろリモートにしろ、根本的な問題は「聞くことへの、マネージャーの姿勢」にあるんじゃないかなと考えてます。そもそも、1on1が「相手の話を聞く場」だと思っていないマネージャーも多いんですよね。

石倉:あと、マネージャー自身は「私はメンバーの話を聞いている」と思ってても、もしかするとメンバーは「業務連絡とか進捗確認ばっかりで、私の話は全然聞いてもらえない…」って、両者にズレが生まれてる可能性もありますね。

本当の意味で「聞いてもらう」経験をしている人は少ない

石倉:やり方はいろいろあると思いますが、1on1のゴールってどこに設定すればいいんですかね?

木村:メンバーが普段モヤっと感じてるけど口に出せてないこととか、アジェンダ化する前の「なんとなく気になる」レベルの声を引き出すことをいかに早く吸い上げるかですね。

となると当然、一番重要なのは「相手の話を聞くこと」。「聞くトレーニング」が必要になってきます。

石倉:「聞く」ことに関して、企業側には普段どういうふうにアドバイスしてるんですか?

木村:「本当の意味で人に話を聞いてもらったことがないので、それを体験するまでは難しいと思います」とお伝えしてますね。自分が今まで上司にされてきたコミュニケーションをそのまま部下に返しているケースが非常に多くて。それが正しい振る舞いだと無意識にマインドセットされてしまってるんですよね。そういう場合、まず自分がコーチングを受けて話を聞いてもらう体験をすることで、「こういうやり方もあるんだ!」と初めて引き出しが増えます。その引き出しを開けてあげないと、難しいんじゃないですかね。

石倉:なるほど、「聞かれるってこんな感じなんだ」っていうのをそもそも知らないから。

木村:はい。「自分の喋ってる割合が少ないから、聞けてるだろう」みたいな感じなんですかね。なんなら、「質問していれば聞いてる」と解釈されてるケースも多いかもしれないです。

これまでビジネスでのコーチングは、部下と話すためのテクニックとかコミュニケーションスキルとして広まってきて、それも一定正しいとは思うんですよ。それに経営者からすると、「コーチングの重要性は分かるけど、利益になるの? 売上につながるの?」という話にもまだまだなりやすい。でも、ここ数年でパラダイムシフトが起きてるなと思っていて、今はより本質的な形でコーチングがビジネスに取り入れられ始めています。

コーチングがメンバーのエンゲージメントを引き上げたり、無意識下にあるものを意識に引き上げることで組織だったり業績にインパクトを出していくものだという理解に変わってきて。一人ひとりが自分自身を理解して、現状と理想のギャップを埋めるアクションを自律的にやっていく人が多い会社を作っていくために、コーチングが扱われるべきかなと思いますね。

人事施策ってROIとかに落としづらいものではあるんですけど、僕らがサービスを提供していて数値上明らかに意味があるなと感じるのは、コーチングを受ける前と後のワークエンゲージメントみたいなスコアを計測してみると1.8倍とか2倍近くになったりするんですよ。それが部長さんとかのレイヤーで起きるので、ROIみたいなところは火を見るより明らかだなと思ってるんですよね。

石倉:よく言われる「自走できる組織」「自律できる組織」って、したくないって人あんまりいないと思うんですよ。でも、なんでこれだけできないのかっていうと、おそらく人じゃなくて会社側に問題があるんだろうと思います。仕組みを作るうえでも人との関係性を作るうえでも、コーチングが大事なものだっていうことをもっと知られてもいいですよね。

木村:コーチングはつけ焼き刃でやろうとすると、マネージャーが急にずっと質問しかしなくなったとか、逆に変なことになったりもするので。餅は餅屋というか、そんなに簡単な技術ではないので、まずはプロに依頼してきちんと組織で機能するコーチングを取り入れていただきたいなと思いますね。

アジェンダをつくるのはNG?1on1の落とし穴

木村:1on1のために質問リストを用意するマネージャーさんもいるんですが、「マネージャーが知りたいこと」という目線から入ると、結果的にうまくワークしないことが多いですね。

石倉:マネージャーからしたら、いろんな質問を用意して「聞いてる」「ヒアリングしてる」つもりになってるけど、メンバー的には「本当に聞いてほしいのはそれじゃない」みたいなことってありそうですよね。

木村:そうなんです。感覚として、1on1の時のメンバーは2分すると思うんです。毎回しっかりアジェンダを用意してくるすごく真面目なメンバーと、1on1が始まった瞬間に「さて、何話そうかな…」って難しい顔をするメンバーと。

アジェンダを作ってくるメンバーとの1on1は、マネージャーとしては質問に答えていけば良いだけなので、正直ラクなんですよね。でも、意外とそのパターンの方がやり方をちゃんと考えた方がいいと思っていて。というのも、そういう場合、会議でもできる話を1on1に持ち込んでいる可能性が高くて、本当に言いたいことや思っていることが表面化されずに放置されている可能性があるからです。

石倉:なるほど。上司はラクだけど、本来の目的が果たされていないってことですね。

実は、僕は毎週必ず、社長の中川と30分間の1on1をやっているんですよ。だいたいの確認とか連絡はチャットでしてあるんですけど、特に話すことがなくても「30分話す」ってことだけ決めてやってて。全然仕事と関係ない話題から、気づきとか仕事に発展する話が生まれることもあるんですよね。「とりあえず、毎週何か話す」みたいなのを我慢して慣れるまでやり続けるのも、実は大事なのかなと。組織って、結局は「1対1の繋がり」×50人や100人なので、気軽に話す場面をたくさん作るのがいいのかなと最近は思いますね。

しかも、お互いに楽にできるようにしてて、カメラはOFFでリラックスした感じで、あえて経営会議の前にやってるんで絶対に延びない。

木村:いいですね。僕が1on1するときは「最近、元気そうだね」とか「あの仕事、良かったね」とか、自分から見た景色を伝えたうえで水を向けるようにしてますね。

「喋らないで書く」がテキスト文化の基本

木村:リモートワークと切り離せないのが、テキストコミュニケーション。「全員リモートワーク」のキャスターさんでは、チャットとかテキストコミュニケーションのルールって何かありますか?

石倉:特段ルールと言ってることはないんですけど、僕がメンバーにずっと言ってきたのは「キャスターでは、Slackがオフィス空間。感じたこと、考えていることは全部とりあえずなんでもいいから、どこかしらのチャンネルで書いて」ってことですかね。

リモートワークでは、「喋らないで書く」文化をいかに徹底できるかが基本なんじゃないかなという気はします。たとえば、情報共有は口頭や電話じゃなくてチャットですると決めておけば、全員が非同期に見ることができるし、入ってくるインプット量が全然違うじゃないですか。進捗の把握も経営判断も、やりやすくなりますよね。

最初は皆すぐミーティングしたがったり、チャットもDM(個人チャット)で送ってきたりすることが多いんですけど、ミーティングじゃなくてチャットでやろうよって促したり、プライベートな内容じゃなければDMもなるべくパブリックのチャンネルで返したり、徐々にテキストに慣れてもらうちょっとした働きかけはあるといいかもですね。社内でテキストで進める人の比率が増えればシンプルにそっちに流れるんで、経営層とかマネージャーがテキスト主流の流れをつくることは大事な気がします。

木村: チャットはたくさんメリットありますよね。あえて聞きたいんですが、「これだけはSlackだとキツいな…」って感じることってありますか?

石倉:何かあるかなぁ。まぁ、チャットでスゲー長いメッセージが連続で3つくらいきてると、正直読むのめんどくさいなと思いますけど。でも、それは対面でも同じで。「難しい話なので電話でいいですか」って言われて電話した人の、何言ってるのか分からない率100%みたいな(笑)。テキストで簡潔に言えない人は、だいたい口でも説明できないんだろうなと思うんで、テキストか口頭かっていうより伝え方の問題な気はします。

肌感では、現場メンバーより経営者側が、テキストコミュニケーションに苦手意識を持ちがちですね。そういう会社は、いっそ「1週間、ミーティング禁止、全員テキストコミュニケーション」みたいなのをやってみたらいいんじゃないですかね? テキストコミュニケーション苦手って言いながら、絶対に家族とかパートナーとは毎日LINEしてるはずだし(笑)。慣れの問題じゃないですかね。

木村:たしかに。テキストで表現できないことは対話でもそんなに表現できないよね、というのはあるかもですね。

テキストだと、雰囲気がピリッとする問題みたいなのはないですか? 対面なら和やかに進むのに、テキストだとなぜかピリッとするみたいな。

石倉:役職によっては、そんなつもりなくてもピリッとしたりすると思うんですよ。だから、上司を軽くいじってくれる人とか、空気を和らげてくれるキャラの人が重要。たとえば、社長が発言した後に僕がとりあえず何か1つ差し込むみたいなのが結構大事なのかなって気がしてて、そういうのでカバーするしかないんじゃないですか。

木村:それはありますね。面白いスタンプ1つ押すだけで、気持ちが緩むみたいなのありますよね。「合いの手力」というか。
大企業さんだとあまりされない気もしますけど、うちの会社のSlackだとアイコンをキャラクターとか動物とか面白いアイコンにしてて。その人自身の顔で発言するのも大事だと思うんですけど、なんか「猫に言われてる」って思うだけで、「しょうがないね」って気持ちになるというか(笑)

石倉:「猫だし」みたいなね(笑)。そういう余白を認めるっていうのは、結構大事なんだろうな。Slackで謎のスタンプ作ってくれる社員とか、貴重な存在ですね。

※本記事は、10月25日に『Alternative Work』が主催したイベントの内容を編集して作成しています。

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『Alternative Work』では、毎月ゲストを招いた対談イベントを開催しています。興味のある方は、ぜひお申し込みください。

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さくら もえMOE SAKURA

出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。

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