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男性育休の推進に向けて、企業側・取得側がそれぞれすべきこと3つ

2024/02/08 Thursday
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政府の後押しもあり、変わりつつある男性育休の実態。2022年度は取得率が17.13%を記録し、過去最高となりました。「対象者の取得率100%」を達成する企業も続出する一方で、数日の超短期取得にとどまるケースや、取得に関して職場と摩擦が起きる例などもみられます。せっかく取得するなら、職場にも家庭にもプラスが生まれるような取得をしたいもの。そのために知っておきたいポイントをまとめました。

経営者・マネージャーが「組織としてやるべきこと」3つ

従業員が長期間の育休を取得することに対し、ハードルがあるのは当然です。その課題を乗り越えるには、組織側の工夫も必要となります。経営者やマネージャーが男性育休を本気で推進するのであれば、意識したいことが3つあります。

従業員に「男性育休のメリット」を名言する

経営者自ら、従業員に向けて「男性育休の取得を推進する」「取得率100%を目指す」といったメッセージを明言することが大事です。

職場で男性育休が浸透すれば、取得者本人はもちろん、周りや職場のメンバー全体にとってもさまざまなメリットがあります。業務の棚卸しやシェア、効率化が進んだり、業務を引き継ぐ人が一時的にでもほかの人の仕事を代行することで視野が広がったり、新しい経験を積めたりします。逆に業務が属人化した職場では、「自分が休むと、周りに迷惑をかけてしまうから」といって、育休を取りづらい雰囲気になってしまうのはよくあることです。

男性育休が当たり前の環境を作ることで職場にどんなメリットが生まれるのか、具体的にアナウンスすることで、育休取得のきっかけ作りになるでしょう。

仕事を引き継ぐ人の負荷に、最大限の配慮をする

育休取得者から仕事を引き継ぐ人は、通常の担当業務に新たな業務が加わることになるため、業務の分担には注意が必要です。雑な振り方をしてしまうと、育休取得者と周囲の間に不公平感を生んでしまいかねません。

業務を引き継いだ人には相応の評価をしたり、インセンティブを与えたりといった工夫が考えられます。いずれにせよ、育休取得者と引き継ぐメンバーだけに運用を任せておくのは危険です。当該部署のマネージャーはもちろん、必要に応じて人事や関連部署も巻き込んで考えていく必要があります。

根本的なところから男性育休を推進するためには、経営者が旗振りをして、職場全体で理解を深めていく姿勢が大事でしょう。

取得率だけでなく「取得日数」が伸びているかも意識する

さまざまな取得促進策の効果が出て、今、男性育休の取得率はじわじわと高まりつつあります。ただ、2,3日の取得では「取るだけ育休」になりかねません。夫婦で目線をそろえ、共に育児に取り組むには、少なくとも数週間〜数カ月の期間が必要でしょう。

経営者やマネージャーは、取得率だけでなく取得日数という観点にも意識を向け、客観的に自社の現状を評価することが大切です。取得日数を伸ばすために、単に育休関連の制度を整えて周知するだけでは足りません。業務の棚卸しや働き方改革を進め、長期間でも育休を取りやすいカルチャーを醸成するために具体的に何をするのか、施策の内容も具体的に示すことが求められます。

なお、男性育休の壁としてよく挙げられるのが「収入減」ですが、先日政府が「両親が14日以上育休を取った場合、28日間まで手取り収入を休業前の10割にする」という方向性を示しました。現在の育休制度では、休業中の手取り収入は休業前の8割ほどです。もし制度が変わり、休業中も手取りのほぼ全額をキープできるとなれば、育休取得率アップの大きな後押しになりそうです。

育休取得を決めたら「夫婦でやっておきたいこと」3つ

せっかく取得できた育休を有意義なものにするためには、育休取得者本人が家庭でするべきことが多くあります。基本であり最も大切なことは「夫婦で十分にコミュニケーションを取る」ということです。育休取得を決めてから出産までの間にやっておきたいことを、具体的に3つまとめました。

育休の取得時期や育児・家事の分担を決める

産後は、産前以上に夫婦で助け合い、同じ目線で育児・家事を分担していきたいところ。とくに出産直後の母親は、ただでさえ心身が揺れ動きやすい状況です。「言葉に出さず、雰囲気で察し合う」コミュニケーションでは通じないことも出てくるでしょう。

それまでうまく家事を分担していた夫婦も、改めて出産前に、どちらが何を担当するのか、または祖父母や業者などに頼むのかを決めておくことが大事になります。

具体的な手段としては例えば、積水ハウスが一般公開している「家族ミーティングシート」を使うのもいいでしょう。家事・育児のタスクが細かく整理され、見える化できます。これまでやってきた家事の種類と量が可視化されることで、夫婦間で感謝が生まれるというメリットもあります。

もちろん、すべてのタスクを毎日完璧にこなす必要はありません。手を抜けるところや外注できる部分は手放して、ストレスを軽減し、サステナブルな生活環境を整えていきましょう。

時間があるうちに、育児関連の情報収集をしておく

産後は、乳児のお世話に加えて、各所への手続きや連絡などに追われてバタバタします。産前の時間があるうちに、情報収集をしておきましょう。

一般的には例えば、産後に必要な日用品をリストアップして買い出しをしたり、近くの保育園について調べたり、自治体が開催している子育て講座(パパママ講座)に参加する方が多いようです。子育て講座は、近い時期に出産を迎える方と親しくなれる機会でもあり、出産後の情報共有、相談相手にもなるため、特に第一子の時には参加するとよさそうです。可能なら、職場に提出する書類の種類も確認しておくといいでしょう。

また、最近は育児専用のスマホアプリもたくさん出ています。授乳やおむつ交換のタイミング、ミルクの量、夜泣きの回数などを記録することで、育児記録や情報共有に役立てるというもの。自分たちにとって使いやすいものをセレクトしておくと、いざ使い始めるときにスムーズです。

意識して「共感し合う」コミュニケーションをたっぷりととる

子育てでストレスを感じたとき、それを誰かとわかり合える場があるのとないのとでは、心身共に大きな違いがあります。辛さや苦しさを吐き出して、誰かに共感してもらうことで救われる人は多いでしょう。

大事なのは、夫婦で意識的にお互いの話をよく聞き、気持ちを引き出すこと。共感し、それを意識して言葉にすることで、ネガティブな本音も言いやすい家庭を作っていきましょう。

また、近年社会課題となりつつあるのが「産後うつ」です。10%ほどの罹患率があり、産後3カ月間はとくに発症しやすいとされています。出産直後から数カ月間は、意識して夫婦間の会話を重ねることで、産後うつの発症予防にも役立つでしょう。

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さくら もえMOE SAKURA

出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。

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