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産業医に聞く!部下に「ハラスメント」と言われないための“対話法”

2022/11/17 Thursday
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「ハラスメントと言われたら、どうしよう」

世間で“ハラスメント”が取り沙汰されるようになり、漠然とした不安を抱いている上司の方もいるのではないでしょうか。

企業の産業医などを請け負う精神科医の木村好珠先生に、マネジメント層のハラスメントとの向き合い方について伺いました。

多様化する、〇〇ハラスメント

ここ数年で、“ハラスメント”という言葉をよく聞くようになりました。

セクハラやパワハラといった昔から問題提起されているハラスメントから、テクノロジーに弱い人に対するテクハラ(テクノロジーハラスメント)、SNSでのフォローを強制するソーハラ(ソーシャルハラスメント)といった現代らしいハラスメントまで、さまざまな種類が生まれています。

最近私が耳にしたのは、“新型パワハラ”というもの。従来のハラスメントが「部下に『使えない』といったり、仕事を無理やりやらせたりといったもの」であるのに対して、新型パワハラは「やる気のある部下に『無理するな』と言いすぎてしまうこと」だそうです。

仕事をやらせすぎてもダメ、無理するなと言いすぎてもダメ…。「じゃあどうすればいいんだよー!」と悩んでしまうマネジメント層も少なくありません。

2022年4月より、厚生労働省がパワーハラスメント防止措置を全企業に義務化するよう通達しました。職場において行われるパワハラは以下のように定義されています。

①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの要素を全て満たすもの

雇用環境・均等局 パワーハラスメントの定義について

客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しないとしっかり明記してはあります。でも、この基準はかなり難しいですよね。たとえ上司自身が意図せずとも、相手の捉え方によっては優越性を持っているかのように錯覚させてしまうこともあります。

「違い」と「共通」の共有から始めよう

無意識なハラスメントを生まないために、まず最初にお伝えしたいことは、「人が違えば、頑張りたい度合いも違って当たり前」ということです。

年代問わず、快適な環境は人によってさまざま。同じ新卒社員でも違いますし、一人の人間でもライフイベントによって変わります。

すごく仕事熱心な人も、結婚して子どもができて…というときには、仕事より家庭を優先したくなるかもしれません。でも、家庭優先したくなるのが当然ではないですし、20%優先したい人もいれば、50%くらい優先したい人もいる。仕事に対しても、やりたいことができれば一番良いですが、全員がそうとは限りません。

それを認識した上で、まずは「違いの共有」と「共通の共有」をしておくこと。

「違いの共有」とは、その仕事についた理由やモチベーション、個人の仕事目標やライフワークバランスの希望などです。一方、共通の共有」とは、皆がチームとして目指す会社の目標や経営理念などです。共通の目標は会社運営のためには大切ですし、必要以上に押しつけないためには違いも知っておく必要があります。

部下との対話のポイントは“自己開示”

「違い」と「共通」の共有の方法は“対話”です。
ここで言う対話とは、単純な話す・聞くではなく、双方の意思が伝わり合うこと

最近では多くの会社が1on1ミーティングをするようになっていますが、これもやり方が重要です。評価の面接なのか、支援(部下が仕事環境を良くするための意見交換)の面接なのか、まずは目的を明確にしておきましょう。

そして、聞き方も大切です。「やる気があるのか?」と聞いて「ありません」と答えられる人はなかなかいないですし、今の仕事が向いているのか悩んでいる人はいるかもしれませんが、「やりたくない」とはっきり言う人も少ないでしょう。

まずは、現状での頑張りを具体的に評価し、会社として必要としていることを伝える、それと共に本人の将来の希望など、今の自分よりも先に目線を向けてもらう個人の質問をします。上司の前で、今の自分自身を評価されるのは結構苦痛に感じる人も多いですから。

必ずしも今の会社にずっといるかどうか分からないことも含めて、いろんな選択肢があって、それは自分で決めていいんだということも認識してもらいましょう。その上で、ぜひ一緒に働いてほしいし、選んでくれるのであればお互いの働きやすい環境を“一緒に”模索しようと提案をすることが大切です。

そのときに、少しだけ「僕も正直、『疲れたー会社行くの面倒臭い!』ってなるときもあるけどね」など笑いも含めて会話できると、部下の人もネガティブな面を吐きやすく、雰囲気が柔らかくなります。上司だからといって、全て完璧なわけではありません。だからこそ、ダメな自分も見せてあげるのが大切。相手に自己開示させるには、まずは自分の自己開示が必要です。

私も診察の時に「朝起きる時間は一定にしてください。でも、私も寝ちゃう時あるから、なるべく心がけて少しずつできる日を多くしていきましょう」だったり、「私もお酒飲むから、お酒に関しては強く言えないけど…でも、この薬飲む時だけはやめてみましょう!」など、少しだけ自己開示をします。

もちろん、上司と部下の関係性とは違いますが、医者と患者も上下関係ができやすいといった点は似たところがあります。自己開示をすることにより、「上司といえど、固くなりすぎなくていいんだ」と思ってもらうことで、ハラスメントの1つの定義にある「優越性」を少し和らげることができます。

また、重要なのは、いきなり面接で「本音を話してください!」といっても難しいので、普段から声がけをすることです。声がけも、「頑張っているか?」などと聞いたら「はい」と答えるしかないので、基本的には「なんかあったらいつでも聞いてほしい」というスタンスを提示し、それを実践すること。いざ、話しかけたら「ぶっきらぼう!」では、むしろ信頼性が欠けてしまいますよね。

たまに面接相手を変えるのも良いと思います。仕事で携わった他の部署の人だったり、自分のことを知っているけれど直接評価をするわけではない立場の人だと、少し話しやすくなるはずです。

ゲーム感覚のグループワークも有効

グループワークも、ハラスメントになる前にみんなの気持ちを聞き出せる1つの方法です。

議題を出して話し合ってもらうのですが、たとえば「会社の良くないところ」などを議題にしてしまうとなかなか意見は出ないので、「ここをこうしたら、もう一歩仕事が楽しく/やりやすくなりそう」「こんな会社で働きたい」などのテーマにしましょう。

カフェのようにリラックスしながら話をする「ワールドカフェ方式」という方法ですと、全員が会話に入りやすくなるので、気になる方は調べてみてくださいね。

また、相手のスタンスを知る「〇〇である、〇〇でないゲーム」もおすすめです。お題に対して「〇〇である、〇〇でない」と答えてもらいます。

たとえば、「仕事とは」というお題で思い浮かべてみてください。私の回答は「仕事とは、創造性が掻き立てられる場所であり、自分の意見を言ってはいけない場所ではない」。ある友達に聞いたら、「仕事とは、お金をもらう場所であり、道楽ではない」と答えていました。なんとなく、その人の仕事に対するスタンスが浮かび上がってきませんか?他にも、「上司とは」「会社とは」などいろんなお題で聞くと、その人のスタンスが分かるとともに、凝り固まった概念だったり、「この人、すごい遠慮しているな」だったり、いろいろなことが見えてきます。

ハラスメントと言われるのが怖いからと言って、部下とのコミュニケーション量を減らすことは、対策にも解決にもつながりません。

ぜひコミュニケーションの方法を変えてみることで、双方の意見を伝え合える関係性づくりを意識してみてくださいね。

部下のメンタルケアに関する、木村さんの寄稿記事はこちら:
「部下のこんな変化に注意!リモートワークで上司がすべきメンタルケアとは」

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木村好珠KONOMI KIMURA

精神科医・産業医・スポーツメンタルアドバイザー。 メンタルクリニックでの勤務、14社の産業医、サッカーや野球などトップアスリートへのメンタルアドバイス、アカデミー世代へのスポーツを通じたメンタル育成を行う。1人でも多くの笑顔が生まれるよう日々奮闘中。著書に『スポーツ精神科医が教える日常で活かせるスポーツメンタル(法研)』 『人づき合いがスーッと楽になる コミュ力アップの法則(法研)』など。

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