management 経営/マネジメント

求人応募が定員の5倍。リモートワークから見る、障がい者雇用

2024/05/23 Thursday
この記事をシェア: xシェア

障害者雇用促進法の改正により、2024年4月に企業が雇用すべき障がい者の法定雇用率が2.5%へ引き上げられ、2026年7月には2.7%へと段階的に引き上げられることが決まっています。

そんななか、株式会社キャスターではわずか1ヶ月弱で6名の障がい者雇用を実現。理由の1つには、フルリモートワークという働き方が作用していると言います。リモートワークが障がい者雇用に与えるメリットや影響について、人事担当者・遠藤ひかりさん(共通アカウント運用によるバーチャル人事)にお話を伺いました。

1ヶ月弱で6名の障がい者雇用を実現できた理由とは

――株式会社キャスターでは、2023年に障がいを持つ方を対象に求人募集をしたところ、わずか1ヶ月弱で6名の方を採用できたと聞いています。非常にスピーディーな採用を実現されたと思いますが、まずは率直な感想を伺えますか?

遠藤:これほど短期間で採用が進むとは思っていなかったので、驚いたというのが正直なところです。自社サイト、自社で運営する求人メディアの「Reworker」、ハローワークで求人を募集したのですが、すぐに定員の5倍を超える30名近くの方からエントリーをいただきました。そこから面接などもスムーズに進み、結果的に1ヶ月弱で6名の入社が実現しました。

――企業が雇用すべき障がい者の法定雇用率は今後も引き上げられていきます。一般的に企業が障がい者雇用を進める際にはどのような課題や難しさがあるのでしょうか?

遠藤:障がい者雇用に限らず一般的な採用と同じですが、まず大変なのはやはり母集団形成だと思います。出社型の場合、オフィスへの通勤が可能な距離に住む方に応募いただき、その中から企業の求めるスキルとマッチする人材を見つけ出し、なおかつ給与や働き方など応募者の希望ともすり合わせていく…これらのプロセスは、どんな採用においても容易ではありません。

また、これも障がい者雇用に限った話ではありませんが、労働人口が減少し人手不足に悩まされる企業が多いなか、採用においては売り手市場が続いています。なかでも、障がい者雇用に関しては、今後も法定雇用率が引き上げられていくので、働き手にとっては選択肢が増えると同時に、企業側にとっては自社に応募してもらうハードルがますます上がっていくことが予想されます。「いかに選ばれる企業になるか」は、あらゆる企業が向き合っていかなければならない課題だと感じます。

――そんななか、スピーディーに採用を実現できた理由は、やはりリモートワークでしょうか?

遠藤:そうですね。オフィスへの通勤の負担が減るのは大きなメリットだと思います。障がいの内容や状況によっては、毎日の通勤が難しい方もいらっしゃいます。また、キャスターでは中抜けを認めるなど勤務時間も柔軟なので、リモートワークと組み合わさることで、たとえば定期的な通院のための時間を確保しやすくなる面もあるかと思います。

実際に、今回の入社者を対象にしたアンケートでは、回答者の全員がキャスターを選んだ理由(複数回答)として「リモートワークをしたかったから」にチェックが入っていました。ちなみに、半数以上が前職では出社型だったとのことです。

また、「働き方をリモートワークにすることによって、障がいがある人の業務内容の選択肢は広がると感じますか?」という質問に対しても、回答者の全員が「業務内容の選択肢が広がると感じる」と回答しています。経験談として、「業務内容に興味があっても、職場環境によって断念した経験がある」という声もありました。

障がい者雇用におけるリモートワークのメリット

――障がい者雇用におけるリモートワークへのニーズの高さを感じますね。企業側にとって、リモートワークで障がい者雇用を進めるメリットはどんなことがありますか?

遠藤:まずは、居住地や通勤の可否に関わらず、全国から求人を募集できる点では大きなアドバンテージになります。

また、リモートワークの場合、障がいの種類に応じたバリアフリー環境の整備を会社側で行う必要がないので、そのような面でも採用時のハードルが下がると言えるかもしれません。出社型の場合、たとえば車椅子を使用している方を採用する際には、ビルはバリアフリーになっているか、フロアの動線は確保できるかなど、確認や整備が必要になります。しかし、リモートワークであればいつも生活をされている自宅で仕事をしてもらうことになるので、会社側で物理的なオフィス環境について議論する必要はなくなります。

他にも、これは意図していたわけではないのですが、今回の障がい者雇用の取り組みを知った社内からは「リモートワークでは、障がいを持っている/持っていないに気づかないし、そもそも考える発想にない。リモートワークの働きやすさの1つだと改めて感じた」というリアクションもありました。

――なるほど。オフィス出社だと気づくけれど、リモートワークだと気づかないというケースは多そうですね。

遠藤:そうですね。出社型の場合、たとえば車椅子を利用されていたり、盲導犬を帯同されていたり、白杖を使用されていたりなどすれば、意図せずとも周囲が障がいについて知っている状態が生まれます。一方、リモートワークは視覚的な情報が限られるので、出社型と比較すると意図せず障がいについて知ることは少ないかもしれません。

――障がいの有無について社内へ周知するかどうかは、会社側はどのように決めるのでしょうか?

遠藤:プライバシーの観点からも慎重に取り扱うべき情報の1つなので、障がいの有無の社内への公開については本人の意向を尊重すべきだと考えています。

社内の理解や協力を得るために自らオープンにする方もいれば、知らせずに働くことを希望する方もいて、さまざまです。

安全配慮義務につながるため、人事側では把握・管理はしつつ、社内への公開の有無や範囲については本人の意向を優先しています。

特定のサポートではなく、働き手が自身で選べる選択肢を

――人事側で、障がいを持つ方に対して意識されているサポートは何かありますか?

遠藤:人事側で障がいがあるからサポートしている、というものは特に思い当たらないかもしれません。

チーム内や日常の業務内での細かなサポートはそれぞれあると思いますが、障がいのある方に限らずフルリモートワーク×柔軟な勤務時間という働き方において自然と解消できていることは多いと感じます。

「働く場所はオフィスでなければならない」「働く時間は何時から何時でなければならない」などの縛りを積極的に取り除いてきたのが今のキャスターです。会社のスタンスとしても、働き手に対して特定の何かを提供するというよりも、制度やルールを柔軟にして自身で最適な手段を選べるようにするという考え方が根本にあります。その在り方が、障がいの有無に関わらず、あらゆる人の働きやすさにフィットしているという感覚が近いかもしれません。

――あらゆる働き手に対して選択肢を与えていくことが、結果的に障がいを持つ人の働きやすさにもつながっている、ということですね。
最後に、キャスターの人事として大切にされていることがあれば教えてください。

遠藤:世の中では、障がいの有無の他にも、たとえば男性/女性、居住地が都心/地方など、パーソナルな部分をピックアップして社会課題として議論されることが少なくないと思います。そのような社会課題があることは事実なので、それ自体にもしっかりと目を向けていきつつ、キャスターとしては「リモートワークを当たり前にする」というミッションの実現に向けてリモートワークをする人を増やし、働くことに関するさまざまな障壁を解消していければと思っています。

**
キャスターの展開するサービスでは、リモートワークによる企業の障がい者雇用をサポートしています。以下よりお気軽にお問合せください。

リモートワーク特化型求人メディア×エージェントサービス「Reworker」
https://www.reworker.jp/recruiter

フルリモートワーク専門の人材派遣サービス「在宅派遣」
https://www.zaitakuhaken.com/biz/form.html

この記事をシェア: xシェア

編集部EDITORIAL

Alternative Work編集部が働き方にまつわるトピックをお届けします。

メールマガジン

メールマガジン
リモートワークや新しい働き方がわかる、
仕事のヒントが見つかる情報をお届けしています。