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退職した社員が復職「カムバック制度」メリット&注意点、事例まとめ

2024/10/03 Thursday
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一度退職して他社に転職したメンバーが、自社に戻ってくるーー昔は「出戻り」とネガティブに見られることもあった現象が、いま「カムバック制度」として注目されています。

企業にとって「カムバック制度」を導入することでのメリットや注意点、実践している企業の事例をまとめました。

導入率は12.3%、カムバック制度とは?

一度退職して他社に転職したメンバーが、自社に戻ってくる「カムバック制度」。復職制度、アルムナイ(OB/OG)制度、キャリアリターン制度、ジョブリターン制度などと呼ばれることもあります。呼び名だけでなく、対象者も企業によってさまざまです。基本的に、育児や介護、病気の治療などの理由で退職した人が対象になることが多く見られます。「カムバック制度」は注目されているキーワードではあるものの、アルムナイが集まるコミュニティをつくり、それを通じた採用をしているのは、全体の12.3%と一部の企業にすぎません(※1)。採用サイトやハローワーク、転職イベント、人材紹介などと比べるとまだ少ないのが実態で、今後拡大していく余地があります。

※1出典:リクルート「企業の人材マネジメントに関する調査2023 アルムナイ(カムバック採用/退職者コミュニティ)編

カムバック制度の3つのメリット

企業がカムバック制度を取り入れるメリットのうち、主なものを3つ解説します。

即戦力を期待できる

1つ目は、即戦力となる人材を採用できることです。

在籍時に培ったスキルやノウハウを再度活かせるのはもちろん、社風やカルチャー、社内ルールへの理解もあるため、スムーズにフィットするでしょう。

復職した社員は、一度他社へ出ているぶん、自社を客観的に見ることができます。また自社で得たスキルと他社での経験を掛け合わせることで、イノベーションにもつながると考えられます。多くの業界で人手不足が深刻化しているなか、カムバックした人材を柔軟に採用できれば、組織にとって大きなメリットになります。

採用コストをおさえられる

2つ目は、採用コストをおさえられることです。

求人広告を出稿したり、採用イベントを開催したり、ヘッドハンティングしたりするコストを省略できます。

人柄やコミュニケーション能力などの定性的な要素も把握した状態で採用を検討できるため、内定までのスピードが早まります。人事や面接担当者のリソースを削減しながら、効率的に確実な成果をあげられる制度といえます。

企業ブランディングにつながる

3つ目は、企業ブランディングにつながることです。

元社員にも門戸を開いているオープン性、そもそも元社員がカムバックしたいと感じる職場であることなどがポジティブに受け取られるでしょう。

近年、転職は珍しいことではなくなっています。採用候補者にとって、いつか離職したとしても変わらず「仲間」として受け入れられ、つながり続けられる会社だという点は大きな魅力になります。候補者だけでなく世間一般からのイメージアップも期待できるので、優秀な人材を集める足がかりになるとも考えられます。

こうしたメリットは、ビジネスにも影響します。実際、アルムナイネットワークを通じて採用を行っている企業や構築に取り組んでいる企業は、そうでない企業と比べて、「採用が好調」「従業員エンゲージメントが高い」傾向があることがわかっています(※1)。

カムバック制度の注意点。社内で摩擦が起きない工夫を

メリットの多いカムバック制度ですが、注意点もあります。

まず忘れてはいけないのは、他のメンバーが不満を抱く可能性があること。例えば、カムバック社員がいい待遇を受けたり高いポジションに就いたりすると、不満が募りやすくなります。周りのメンバーのモチベーションが下がれば仕事そのものにも影響が出かねず、本末転倒です。なかには、カムバック制度に対してネガティブなイメージを持っている社員もいるかもしれません。

経営者は、社員が快く受け入れられるように、カムバック制度の趣旨や狙いを周知しましょう。また、カムバック後の待遇や新しいポジションについては慎重に検討することが必要です。組織全体のバランスを見て最適な待遇を提示し、復帰する側と会社側の双方が納得したうえで受け入れることが大切です。

また、以前の在籍時に身につけたスキルや経験が今の業務内容にも必ずしも合うとは限りません。スキルが古びていることもあるので、会社側のサポートやフォローが必要です。また、職場のルールや業務プロセスが変わっているケースもあるでしょう。当然復職者本人も、キャッチアップする努力が必要になります。組織の状況に応じて、勤続年数、スキルなどの条件をつけて、対象者を絞るのも一手です。

導入している日本企業の事例3つ

すでにカムバック制度を導入している企業は多くあります。単に制度をつくるだけではなく、アルムナイコミュニティを整備し、本格的にカムバック制度の運用に取り組んでいる具体例を3つご紹介します。

富士通は、元社員を「仲間」と捉える社風

富士通は、正式にカムバック制度を設けて中途採用をしています。対象者は「勤続1年以上」「退職後5年以内」「退職理由は育児や介護、学業など」という条件を満たした元社員です。退職時と同じ部門に復職したい人と別の部門で活躍したい人、それぞれに対して採用の門戸が開かれています。

また、アルムナイコミュニティ「FUJITSU Alumni Network」に入れば、退職後も交流し、つながり続けることができます。一度在籍した社員を「大切な仲間」と捉える、富士通の理念が現れています。

日本郵政はすでに数名の採用実績が

日本郵政は、2022年9月から、本社勤務経験がある元社員を対象にカムバック制度をスタートしました。すでに数名の復職実績があります。

また同時期より、グループ横断のアルムナイネットワークを構築しています。退職後の社員と接点を持ち続けることで、中途採用につなげるほか、多様性豊かな外部人材との協業やイノベーションを生み出すことが狙いです。

パナソニックは2018年に制度スタート

パナソニックは、創業100周年を迎えた2018年に、「A Better Career」と称してカムバック制度を始めました。対象者は、退職理由により退職後3年または5年以内と定められていて、基本的に退職時と同じ部署に復職します。アルムナイコミュニティもあり、現役の社員も含めて交流できます。

グループ会社も合わせた中途採用比率が60.6%(2022年度、※2)と、半数以上を占めているパナソニック。柔軟なキャリアを歩める職場として、さらに魅力を高めています。

※2出典:パナソニックグループ 中途採用サイト

なお、民間企業のほかに、自治体でもカムバック制度は浸透しつつあります。例えば東京都は、2024年4月からカムバック制度による中途採用活動を始めました。過去に1年以上の勤務経験があれば応募でき、選考は筆記試験が免除されます。他にも、茨城県や北海道、長野県、富山県、鹿児島県などが取り入れています。

今、全国で広がりつつあるカムバック制度。石川県・金沢市など、実際に運用している企業に対して助成金を設定している自治体もあります。

採用に課題感を持っている経営者・マネージャー層に向け、ポジティブな選択肢になると考えられます。まずは情報収集を始め、自社に合ったやり方を検討してみてはいかがでしょうか。

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さくら もえMOE SAKURA

出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。

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