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2024年、企業がおさえるべき法令改正まとめ【4選】

2024/01/18 Thursday
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2024年も、続々と予定されている法令改正。自社が対応するべき内容は、早めに押さえておきたいところです。要チェックの法改正をまとめました。

【2024年4月〜】建設業や医師、自動車運転業などで、時間外労働の上限規制が変更に【労働基準法】

労働時間は原則「週40時間、1日あたり8時間以内」と法律で定められており、これを超えて残業をする場合は、労使で「36協定」を結ぶ必要があります。さらに、残業時間は「原則月45時間、年360時間以内。特別な事情がある場合は年720時間、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2~6ヶ月平均で80時間以内」と上限が定められています。

この規制は働き方改革の一環で、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月からすでに施行されています。違反すれば罰則が課せられるため、企業はさまざまな対策をしてきたところでしょう。

ただし、業務の性質や特性、業界の習慣などを考慮して、一部の業種には5年間の猶予が設けられていました。つまり、36協定を結んでさえいれば、上限なく残業することができる状態でしたが、2024年4月、この猶予期間が終了し、全ての業種で残業時間に上限が定められます。

猶予期間の対象となっているのは、建設業や医師、自動車運転業など。いずれも、慢性的な人手不足や長時間労働に悩まされている業種のため、残業時間の規制は現場に大きな影響を与えることから、対応が急がれています。

なお、2024年4月以降の規制の内容は業種・業界によって異なり、例えば建設業は、災害時の復旧・復興事業を除きすべての上限規制が適用されます。自動車運転業では年間の時間外労働が年960時間まで、医師は年間の時間外労働・休日労働が最大1860時間まで(基準により異なる)となる予定です。

いずれの業界でも、改めて残業時間の少ない働き方を目指して生産性を向上したり、正確な勤怠管理システムを整備したりなど、さまざまな工夫が求められるでしょう。

【2024年4月〜】裁量労働制の適用対象が拡大【労働基準法】

裁量労働制とは、労働者が実際に働いた時間ではなく、あらかじめ決めた時間の分だけ勤務したとみなす制度のこと。例えば働く時間をあらかじめ8時間と設定した場合、仕事が順調に進んで6時間で完了したときも、逆に手間取って10時間働いて完了したときも労働時間はみなし時間の8時間で給料が計算される制度で、「成果でみる働き方」とも言われています。働く時間について労働者自身の裁量が大きく、時間に縛られない多様な働き方を実現しやすいため、このような柔軟な働き方を導入すれば優秀な人材が集まりやすく、また労働者個人、ひいては企業の生産性が向上する点がメリットです。一方、すべての職種で採用できるわけではなく、また長時間労働が常態化しやすいという懸念があります。

裁量労働制には2種類あり、1つはシステムエンジニアやデザイナー、編集者、コピーライター、研究者など専門性の高い職種にのみ認められた「専門業務型」。もう1つは事業の運営に関する企画や立案、調査、分析などを行う「企画業務型」です。

この裁量労働制について、2024年4月から3つの変更が予定されています。

1つ目は、これまで企画業務型の要件だった「労働者本人の同意・同意の撤回」が専門業務型にも拡大される点。あくまでも、労働者本人の意志で裁量労働制を行うことになります。

2つ目は、企画業務型において評価制度と賃金制度を変更する場合、使用者が変更内容について労使委員会に説明することになった点。

3つ目は、「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務」が、専門業務型の対象に追加される点。

今回の法改正は、企画業務型と専門業務型の両方に影響があるため、労働者の一部でも裁量労働制を採用している企業は、必ず対応しなければなりません。今一度、ルールを確認しておく必要があります。

【2024年4月〜】障がい者雇用率が段階的に引き上げ【障害者雇用促進法】

1976年から、一定以上の規模の企業に義務として課せられている「障がい者雇用」。障がい者手帳を持つ人を一定以上の割合で雇用するという取り組みですが、2024年4月に一部変更が予定されています。大きなポイントは3つ。

1つ目は、現在2.3%とされている障がい者雇用率が、2024年4月に2.5%に、2026年7月には2.7%へと段階的に引き上げられること。また対象となる企業の範囲も拡大します。現在従業員43.5人以上ですが、2024年4月以降は40.0人以上、2026年7月以降は37.5人以上と徐々に下限が引き下げられます。より小規模な企業も対象になるということです。

2つ目は、障がい者雇用率の算出に使う障がい者の人数カウント方法が変わること。障がいの種類や程度は人それぞれなので、必ずしも1人を1人とカウントしないことに注意が必要です。例えば、週あたりの労働時間が30時間以上の重度身体障がい者・知的障がい者は1人を2人として、同20~30時間未満の障がい者は1人を0.5人としてカウントします。今回の法改正で、これまで人数にカウントできなかった、週あたりの労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障がい者・知的障がい者、知的障がい者も、 1人を0.5人としてカウントできるようになります。

3つ目は、「障害者雇用相談援助助成金」(仮)の新設です。新しく障がい者を雇用したり、雇用を継続させる支援をする企業(法人)への助成金です。助成を受けるには、都道府県労働局長の認定を受け、さらに独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の審査に通る必要があります。助成額は基本額が60万円、中小企業などを支援した場合は80万円となります。

新たに障がい者雇用が義務づけられる企業はもちろん、雇用率が2.5%を下回っている企業も、4月までの対応が迫られます。

【2024年10月〜】短時間労働者が社会保険の加入対象となる企業規模が引き下げに【年金制度改正法】

一定の基準を満たした企業では、パートやアルバイトも社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)に加入させなければなりません。2024年10月から、その企業の範囲が広がります。以前は従業員数が501人以上の企業が対象とされていましたが、2022年10月に従業員数101人以上の企業に拡大。さらに2024年10月以降は、従業員数51人以上の企業も対象となります。

ただし、パートやアルバイトの全員が社会保険の適用対象となるわけではなく、以下の4条件を満たす労働者に限ります。逆に、この条件を満たす労働者に社会保険を適用しない場合、罰則が課せられます。

  • 週あたりの労働時間が20時間以上
  • 1カ月の給与が88,000円以上(残業代やボーナス、通勤手当などは含まずに計算)
  • 2か月以上継続して雇用される見込み
  • 学生ではない(休学中や夜間学生は適用対象)

被保険者が増える企業は「被保険者資格取得届」などの書類を提出する必要があります。従業員数が51~100人の企業で短時間労働者を雇っている場合は、加入対象者を把握し、対象者に説明するなどの準備を進めておきましょう。また社会保険料は、労使があらかじめ合意した割合で負担するのが一般的。想定される具体的な金額について、事前に確認しておく必要があるでしょう。

今回の法改正により、該当する労働者は将来受け取れる年金額が増え、疾病手当金や出産手当金も受け取れるようになるなど、複数のメリットが生まれます。一方で、社会保険料が給与から天引きされ、手取りが減るというデメリットもあります。また企業側は、手間やコストが増えるものの、労働者のモチベーションが上がり離職防止につながるメリットもあります。自社における該当者の有無を含め、今一度確認しておく必要があるでしょう。

以上、2024年の法令改正の動きについてまとめてお伝えしました。

労務関連の改正が目立ちます。2024年の早いうちに、自社の現状を把握し、対応の方法などを検討しておくといいでしょう。

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さくら もえMOE SAKURA

出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。

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