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デジタルリスキリング、迷ったら「表計算」からスタートすべきワケ

2023/11/28 Tuesday
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始めるべきだと思いつつ、まだ取り掛かれていないという人も多い「リスキリング」。その理由に、「何を学べばよいか分からない」という方も多いのではないでしょうか。

本記事では、IT学習、プログラミング活用のコンサルティングや研修・トレーニングを提供する株式会社プランノーツ 代表取締役・高橋宣成さんに、リスキリングの始め方と表計算スキルの汎用性について伺いました。

リスキリングに迷ったら「表計算」から

「リスキリング、何を学ぶのが良いですか?」

これは、多くのビジネスパーソンから尋ねられる質問です。

その際におすすめしたいのが、身の回りの「課題」を探すことです。たとえば、「定時に仕事を終えたいのに、作業効率が悪くて終われない」とか、「Webサイトから膨大な情報を取得するのに気が滅入っている」などです。

解決する手段として何らかのスキルが有効なのであれば、リスキリングとしてまずはそのスキルを習得すればよいのです。それを、何ヶ月かもしくは何年か積み重ねていくことで、大きな成長を遂げることができるでしょう。

とはいえ、具体的な課題が見つからないということも少なくありません。そういう場合は、もし仕事で「Excel」や「Googleスプレッドシート」といった表計算ソフトを使うのであれば、「表計算」に着目してみましょう。たとえば、以下のような経験がないか思い出してみてください。

  • たくさんのデータを手入力することがある
  • データのコピー&ペーストを何度もすることがある
  • データを探すのにフィルタを何度もつけたり外したりすることがある
  • 何度もファイルを開いたり閉じたりすることがある
  • 入力されたデータを目で見てチェックする作業がある
  • シートの切り替えを何度もしながらする作業がある

もし、当てはまるものがあれば、その作業はもっと楽に、より時間をかけずに、より正確にできるかもしれません。なぜなら、表計算ソフトはその本来の強みを活かせていれば、これらのような作業がむやみに発生しないようにつくられているからです。

さて、いざ表計算ソフトのスキルを身につけるときに、真っ先に取り組んでもらいたいのが以下の3つです。

1.データ型
2.関数
3.データベース

これらは表計算ソフトのスキルの基礎です。もし、これらのキーワードについてうまく説明できないのであれば、基礎を学び直してみてください。表計算ソフトを使った作業の大きな改善を期待できます。

演算や集計を可能にする「データ型」

それぞれの項目について、簡単に触れていきましょう。

まず、データ型です。

データの入力という観点でいうと、表計算ソフトは他の業務ソフトと大きく異なる特徴を持っています。それは、データに「型」があるということです。具体的には、数値、文字列、日付・時刻、論理値の4つの型があります。

なぜ、表計算ソフトのデータには型があるのでしょうか。それは、演算や集計を可能にするためです。たとえば、数値であれば加減乗除といった演算ができますし、数値または日付・時刻で統一されたデータ列に対して、並び替えや大小の比較によるフィルタをかけることができます。しかし、「100円」「2023/11/01~」というように、「円」や「~」などの文字が混在したデータが入力されたなら、それは文字列と認識され、加減乗除や並び替え、フィルタなどは使えなくなるのです。

つまり、表計算ソフトの力を十分に借りたいのであれば、演算や集計ができるデータ型でデータを入力する必要があるのです。

高頻度で使用する「関数」6選

次に、関数です。

関数とは、いくつかのデータを入力として何らかの出力をする手続きのことです。たとえば、SUM関数は入力としてセル範囲を渡すと、その範囲内の合計値を出力するという手続きです。この関数へ入力されるデータを「引数」、出力されるデータを「戻り値」といいます。
ExcelもGoogleスプレッドシートも400種類以上の関数が存在していますが、いずれも「引数を受け取って戻り値を返す手続き」であることには変わりありませんので、それさえ理解していれば構文表を見ることで、使いこなすことができるでしょう。

とはいえ、実際に使う関数はせいぜい数十種類かと思います。まずは、高頻度で使用する以下の関数をマスターするところから始めると良いでしょう。

  • SUM関数
  • IF関数
  • COUNTA関数
  • COUNTIFS関数
  • SUMIFS関数
  • VLOOKUP関数またはXLOOKUP関数

「データベース形式」を守りながら見やすい表作成を

最後に紹介するのが、データベースです。

表計算ソフトは見た目を整える機能も豊富に揃っており、直感的な操作で、人が見るのに適しているさまざまな書類やレポートを作成することができます。しかし、そのような人が見やすいデータの置き方では、多くの関数、集計、ピボットテーブルなど表計算ソフトの機能を活用できなくなるのです。

表計算ソフトの機能を十分に活用するには、データの置き方をデータベース形式とする必要があります。具体的には、以下に挙げるルールを満たすようにデータを配置するのです。

  • 1行目は見出し行、2行目以降に1件ずつのデータ
  • 1列は同じデータ型で統一
  • 1セルには1つのデータのみ
  • 空行や空列は入れない
  • セルの結合は使わない

つまり、人が見るためのデータの置き方と、表計算ソフトの力を借りるためのデータの置き方はまったく異なるのです。この事実を知らないために、表計算ソフトをただのお絵描きソフトのように使っているケースは珍しくありません。

今回紹介したデータ型・関数・データベースは、表計算ソフトを扱うスキルの基礎です。これらの基礎がしっかり身についていれば、学習の土台となりますので、その後の学習の積み上げが素早くなり、かつ、ぐらつくことなくしっかりしたものになります。

さらに、表計算ソフトの基礎は、他のデジタルスキルを学ぶ際にも基礎として機能します。たとえば、ノーコード/ローコードツールやプログラミングにも、データ型・関数・データベースといった概念が基礎として求められるのです。

デジタルリスキリングにおいて多大なメリットをもたらす表計算ソフトのスキル。ぜひ、リスキリングを始めるきっかけにしてみてください。

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高橋宣成NORIAKI TAKAHASHI

株式会社プランノーツ代表取締役。一般社団法人ノンプログラマー協会代表理事。コミュニティ「ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会」主宰。最新の著書に『デジタルリスキリング入門』。他著書に『Pythonプログラミング完全入門 ~ノンプログラマーのための実務効率化テキスト』『詳解! Google Apps Script完全入門[第3版]』等。

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