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決済者はオンラインにいない?BtoBこそ侮れないアナログ手法とは

2023/05/09 Tuesday
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コロナ禍では対面での営業活動が制限され、多くの企業がオンライン上での営業・マーケティングに頭を悩ませる状況になりました。今後迎えるアフターコロナでは、BtoBで商品・サービスを提供する企業はどのようなアプローチが有効なのでしょうか。

本記事は、2023年3月16日に『Alternative Work』が主催したイベント(登壇:株式会社GiftX Co-Founder・いいたかゆうた、株式会社キャスター取締役CRO・石倉秀明)をもとに、前編・後編の対談記事にまとめました。

前編はこちら
BtoBマーケにおけるオンライン・オフラインの融合とタイミング

いいたかゆうた
株式会社GiftX Co-Founder。2014年株式会社ベーシックにて、マーケティングメディア『ferret』を立ち上げ、執行役員に就任。2019年株式会社ホットリンクに入社し、執行役員CMOに就任。2022年7月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを共同創業し、受取り手が選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」運営。著書に『僕らはSNSでモノを買う』『BtoBマーケティングの基礎知識』『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』等。

石倉秀明
約800名がフルリモートワークする株式会社キャスター取締役CRO(Chief Remote work Officer)。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。妻と6歳の娘と犬と猫と暮らしている。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。

オンライン上にいない決済者・キーマンといかに出会うか

石倉:参加者から、「2人ともメディアやSNSでよくお見かけしますが、メディアに出演することやSNSのフォロワー数が多いことは、ビジネスにどんな形で寄与するのでしょうか」という質問をいただいています。

僕については、領域が変わったら全く寄与しないと思うんですよね。SNSでもフォロワーが増える話題って決まってるし、僕が全然関係ないことをつぶやいても、別にフォロワーは増えないので。

そう考えると、やっぱり「この人は〇〇の人」ってみんな認知してくれているんだと思います。認知に沿ったことをするときにはSNSは有効かもしれないですけど、逆にズレると全く関係ないなとも思いますね。

いいたか:シンプルに、効く部分と効かない部分があるということなんでしょうね。メディアに出ている数が多いと人としての認知はされるので、打ち合わせのときに知られてる状態で始められるのは確かにポジティブだなと思います。自分についての説明をしなくていいのは、とても良いです。

石倉:それは間違いなくポジティブですよね。

思うんですが、課長・部長のような決裁権のある人になると、なかなかSNSやオンラインにいないですよね。彼らとどう会っていくのかもポイントだと思っていて。彼らはたぶん「商品名を想起できるか」とか「担当者の名前を知ってるか」とかが大きくて。大きい会社の経営者ほど、ネットで検索はほぼしないと思うんですよね。

僕が本を出したり、地上波のテレビ番組に出ていて良かったなと思うのは、そのような企業の社内の勉強会や研修に呼んでもらえるんですよ。そうすると、たとえば、大きい会社の支店長クラスが100人ぐらい集まっている場所でお話をするみたいな機会をいただける。そして気づくと、決裁者の人にたくさん会ってるみたいな状況になってるんですよね。

いいたか:私も過去に研究所みたいなものに入っていて、大手ブランドさまの管理職の人たちと一緒にワークする機会がありました。そこでのテーマが面白いと、「ちょっと君、今度来て」みたいな感じになって、後日会社に訪問したら役員の方とお話できるみたいなのはありましたね。

石倉:あとキャスターは新経済連盟に加盟しているんですが、その会合に行くとそこでしか会えない人がいたりするんですよね。シンプルだけど、ああいう場も普段会えない人と接点が持てる良さはあるなと思います。

そういうものこそオフライン特有のコミュニケーションで、ちゃんと行ったり、しっかり繋がったりするのって、案外馬鹿にしちゃいけない部分だなと思いますね。特にBtoBやってると。

いいたか:あとは、一社の中にもいろんなキーマンが存在するのもポイントかなと思います。私がやっていたのは「本当にこのお客さまは取引させてもらえたら成功できる可能性しかいない」と思ったら、「その会社の人たちにどれだけ会うか」を自分の目標に置いてました。

昔、関西のとあるお客さまとの契約を目標にしていたとき、関西に行くときは、必ずその会社のアポを4人以上入れるようにしていました。同じ会社で人から人に繋いでもらうみたいなことを地道にやって、誰に刺さるのかを見ていって、本当のキーマンを探してました。

BtoBでも無視できない、情緒的な判断要素

石倉:僕がリクルート時代に大手の派遣会社に広告営業をしていたときも、ユニークな営業手法をしてました。僕がメインの営業をしつつ、外勤渉外・内勤渉外という営業が10人ずつぐらいいたんです。

僕の役割は、一番予算を持ってる本部に対して予算組みをどうするかみたいな話をすること。そこで、ポイントは外勤渉外・内勤渉外の人です。大きな派遣会社だと支店があるんで、支店長や営業部長がいろんなところにいる。そこに外勤渉外の営業がそれぞれ会いに行って、話を聞いてくるんですよね。

それでチーム全体で接点を持ってキーマンを探したり、課題を探してどこからどう提案するか、ということを突き詰めていきました。

いいたか:toBといっても、結局は誰かが選んでるわけですしね。決済者がどこにいて、どうやったらコミュニケーションを取れるのかに尽きると思います。

物を買うときの意思決定も、もう機能面で比べるのが厳しくなってきてるなと思っています。どこのサービスもどこのソリューションも、もう一定レベルを用意できちゃうじゃないですか。そうなったときに、これは私含めてなんですけど、発注って割と情緒的判断も影響しているなと思うんです。

この会社にはこの人がいるから信頼できるとか、この人と仲がいいからここにしようみたいな。そう考えると、オフラインで会ってることってすごく強いんですよね。

石倉:決裁者1人の感覚や感情で決まったりすることは間違いなく多くて、そう考えると実はtoBといっても、ほぼtoCに近いかもしれませんね。

決裁の仕方ってよく「BtoBの方がロジカルに決まってる」って言われますけど、たぶんそんなことはなくて。「検討します、上司に相談します」と持ち帰ったとき、上司に「AとBとCどれがいいですか」ってただシンプルにあげるのと、「私はAがいいと思うんですけど、それで進めていいですか」ってあげるのだと、確度がまったく変わるじゃないですか。

そう考えると、ロジカルに会社としてメリットが最大かどうかより、担当者がめちゃくちゃやりたいと思うかどうかがすごく重要で。その人が会社とそのルールの中でどういう言い方をしてくれるかをイメージして、コミュニケーションを取れるかどうか。マーケティングでも営業でも、ここをいかに詰めるかがすごく大事ですよね。

実は皆やっている「手紙」戦法。アナログが心を動かすこともある

石倉:野村證券さんの有名な話で、「巻物が送られてくる」みたいな話あるじゃないですか。上場しそうな会社があると、証券会社の営業担当の人が、巻物に筆でお手紙を書いて送ってくるっていう。あれ、本当に来るんですよ。僕、前々職で上場したときに送られてきて、びっくりして。

あれだけ会社が続いていて、それでもその手法が残ってるのは、やっぱりそれだけ象徴的な体験になっているんだろうなと。そういう工夫を大事にするべきなんだろうなと思います。

いいたか:そうなんですよね。皆さん公に言ってないだけであって、誰もが知っているある会社さんとかもめちゃめちゃ手紙って送ってるんですよ、1通に45分くらいかけて。ナショナルクライアントに対して、手書きの手紙を送ったりしていて。実はみんなオフラインでは、本当に人間の濃い部分で戦ってるんですよね。

石倉:その会社さん、僕も見学に行かせてもらったとき、フィールドセールスの人とかインサイドセールスの人が1日でかけてるコール数って実はめちゃくちゃ少なかったんです。単にコール数を増やすんじゃなくて、すごいリサーチして、どうやってアプローチするのが一番いいかを考えた上で、手紙やハガキを書いたりしてるんだなと思いましたね。

いいたか:あとは「幸せにする相手を変えるだけでも、大きく変わることってある」というのも思っています。これは実体験で、「お客さまがお客さまを呼んでくれるためには、どういうマーケティングをすればいいんだろう」って考えたときに、結論が「シンプルに目の前のお客さまを成功させよう」になったんです。

石倉:それは間違いないですね。「まずシンプルに良い商品を作る」、そして「その商品の解像度がめちゃくちゃ高い」が大前提で、結局は目の前のお客さんに立ち戻るのが大事ですよね。

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※本記事は、 2023年3月16日に『Alternative Work』が主催したイベントの内容を編集して作成しています。
『Alternative Work』では、定期的イベントを開催しています。興味のある方は、ぜひお申し込みください。
https://www.alternativework.jp/event/

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ヒガキユウカYUUKA HIGAKI

フリーの編集者・ライター。求人広告制作、編集プロダクションを経て独立。主に人事・採用領域で導入事例取材、キャリアストーリー取材をしています。もう一つの専門はボカロ・バーチャルYouTuberなどのネットカルチャー。Twitter:@hi_ko1208

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