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UberEatsドライバーは「労働者」!? いまだに残る本質的な課題とは

2022/11/30 Wednesday
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先日、UberEatsのドライバーを「労働者」と認め、Uber運営会社に対して団体交渉を行うよう命令が出ました。

参照記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/026dab1aa86a9793ea3d3c6f7f2167e239db4a3e

今回の例は、労働組合法上で「労働者」というのが認められ、労使交渉ができるようになったというものです。

これによってUberEatsのドライバーは業務委託契約でありながら、賃金や待遇の交渉ができるようになるので、手数料率などが改善される可能性もありますし、他のデリバリーサービスや同じようにギグワーカーを使ったサービスにも影響があるかもしれません。

しかし、この「労働者かどうか」という点においてまだまだ課題は多いですし、本質的な問題は残ったままとも言えます。

例えば労働組合法上で「労働者」扱いになり、組合として労使交渉ができるようになりましたが、仕事を発注される側の立場の人たちがどこまでほんとうに自分たちの待遇改善を強く求められるのかは不明です。

言い換えればつまり国や行政としては、あくまで法律としての権利を認めただけに過ぎず
「交渉の権利はあるのだから、自分たちで会社と交渉してください」と労働者に会社との交渉を丸投げしているとも言えます。

これは既存の労働組合にも言えることですが、労働者が自分たちで会社に対して、権利を訴えるというのは非常に難易度が高く、どうしても雇用を守るために賃金は多少のベアで許容する、残業を許容する……など、折衷案になってしまう可能性も低くありません。

またもう1つの課題はより本質的なものです。

具体的にいうと、労働基準法には「労働者」と「事業主」の2つしか概念が存在せず、現代に合っていないところが多いまま放置されています。

つまり労働基準法では、法人もコンビニのオーナーもフリーランスもギグワーカーも全て同じ1つの「事業者」として扱われることになっていますが、実態はまるで異なります。

今まで「事業主」だから、と一括りにして、最低時給・勤務時間・社会保険などすべてを適用対象外になってしてきましたが、フリーランスやギグワーカーなどは事業主としての扱いが同等でいいのか?というと疑問が残ります。

副業など個人として働く人も増えていくことを考えると、そもそも「労働者」と「事業主」だけでいいのか、法改正なども考えるべきではないか、という論点がまだ抜けて落ちているとも言えます。

現在の労働環境を把握し直し、どういった法体系がベストなのかを考える時期に来ているのかもしれません。

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※この記事は、2022年11月時点の情報をもとに執筆しております。

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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA

働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。

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