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いまさら聞けない「2024年問題」。業界別の背景・課題・解決策とは?

2024/06/25 Tuesday
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2024年4月、「建設業、運輸業、医師」の3職種において、時間外労働の上限規制がスタートしました。ほかの業界と比べても、とくに長時間労働と人手不足が深刻なこれらの業界。罰則つきの明確な規制が定められた影響は大きく、「2024年問題」と呼ばれています。各業界が抱える背景や課題、解決策についてまとめました。

改めて整理したい「2024年問題」の内容

労働基準法によって、時間外労働は「労使で協定を締結したうえで、原則月45時間、年360時間以内まで(休日労働は含まず)」と定められています。臨時の特別な事情があって労使が合意する場合でも、「月45時間の原則を超えられるのは年間6ヶ月まで、かつ年720時間以内」です。

この規制は、国主導で働き方改革を進めるなかで、2019年4月から大企業に、2020年4月から中小企業に拡大して適用されたものです。違反すると罰則が科され、社名も公表されるため、各業界で対応が進められてきました。

建設業と運送業、医師の3職種は、特例でこの規制が5年間猶予されていましたが、猶予が切れた2024年4月以降は規制対象となりました。長時間労働が前提となり、労働者の健康被害など深刻な課題に直面してきた3職種で、抜本的に労働環境が変わるのではないかと期待されています。

一方で、規制が適用されたことで労働時間が減り、人手不足がいっそう深刻になる面も懸念されています。たとえば、物流の停滞や路線バスの減便、地域医療の滞りなどが挙げられます。

企業が抱えるこれらの課題や、社会に与えている影響をまとめて、「2024年問題」といいます。個々の企業や現場の努力だけで解決することは難しく、社会全体でその実態を知り、理解し、対応する必要があります。

では、今回新しく規制対象となった建設業と運送業、医師の3職種では、それぞれどんな状況が生じているのでしょうか。また、どんな解決策が考えられるでしょうか。業界ごとに探っていきます。

55歳以上が1/3以上を占める建設業界

建設業界の特徴は、長時間労働と休日出勤が常態化してきたことです。その背景には、発注時点で納期が短く設定されているため、1日あたりの労働時間が長くなっていることがあります。「週休2日制」を掲げていても、実際には形骸化している現場もあるようです。
業界全体に「下請け構造」があり、元請から1次下請、2次下請、さらにそれ以下の下請へと仕事が発注されていきます。そのため、元請けの都合によって、不当に短い納期で進められてしまう(工期のダンピング)ケースが多くあります。

働き手が減っており、かつ高齢化が激しいのも建設業の特徴です。働き手の総数は1997年の685万人をピークに減少の一途を辿っていて、2022年は479万人まで減りました(※1)。また、建設業で働く人のうち、29歳以下は11.7%、55歳以上が35.9%となっています(※1)。若手の絶対数が少なく、次世代への技能伝承が難しくなっているのが現状です。

若手が建設業から遠ざかっている大きな要因は、自由に休暇を取りにくいこと、労働のきつさに対して待遇が良くないことなどが考えられます。さらに、これから団塊世代の大量離職があり、人手不足に拍車がかかると危惧されています。

こうしたなかで時間外労働の上限規制がスタートし、労働力不足の深刻化が懸念されています。なお、業界の特性上、災害復旧や復興の事業にあたる場合は規制の一部が適用外となります。

※1出典:国土交通省「建設業を巡る現状と課題」

「クライシス」が現実になりつつある物流業界

物流業界も、これまで長時間労働が前提となってきました。その背景には、高齢ドライバーの退職や若手ドライバーの離職による、人材不足があります。またEC市場が急成長して、宅配便の取り扱い量が急増したことも大きな要因です。2022年度の宅配便取扱個数は50億588万個と、2000年時点の倍近くまで増加しています(※2)。

実際、物流業界は他業界と比べて労働時間が長いことが明らかになっています。運輸業・郵便業の2022年の総実労働時間は、平均「1992時間」で、全産業の中で最長(※3)です。月末の1週間に60時間以上働く労働者の割合も、全産業の中で最多の13.1%(※3)です。

2024年4月以降、ドライバーの労働時間が削られたことで、ますます人手不足が深刻化しています。労働時間が減れば手取り収入も減るため、離職が増加し、人材採用のハードルも上がると懸念されています。実際、トラックの輸送力は2030年度に34.1%不足する(※4)という試算も。もはや、日本の物流体制を維持できなくなる「物流クライシス」と呼ばれています。

なお、物流クライシスの深刻さを受けて、公正取引委員会が下請法の改正に向けて動き始めました。荷主と運送事業者の取引を下請法の対象にすることで、荷主による「買いたたき」を迅速に取り締まる狙いがあるとされています。

※2出典:国土交通省「宅配便等取扱個数の推移」
    国土交通省「令和4年度 宅配便・メール便取扱実績について」
※3出典:厚生労働省「人口構造、労働時間等について」
※4出典:持続可能な物流の実現に向けた検討会 「持続可能な物流の実現に向けた検討会 最終取りまとめ」2023年8月

医療体制を維持しつつ、医師の労働時間を減らす工夫が必要

医師も、長時間労働が深刻です。厚生労働省の調査では、時間外労働が週60時間(年960時間相当)を超える医師の割合は21.2%、週80時間(年1920時間相当)を超える割合は3.7%(※5)という結果に。特に脳神経外科、外科、形成外科、産婦人科、 救急科などは救急搬送が多く、不規則な勤務になりがちといわれます。

長時間労働の背景として、医師の業務が多岐にわたることが挙げられます。患者の診察のほか、患者と家族への説明や書類作成、研究、学会発表、研修医の指導などが重なり、休日出勤も多くなっています。

医療の現場は専門職が中心で、さらに当直や夜勤も多いため、ある意味特殊な労働環境。その中で医師自身の健康を確保するため、連続勤務時間を制限したり、休息時間を確保したりといった制度が必要です。

時間外労働の上限規制が始まった今、全国の医療体制を維持しつつ、医師の労働時間を縮めていく工夫が必要です。なお、救急医療などで地域の医療を確保するためにやむをえない場合には「休日勤務を含んで、年間1860時間以下」の特例があります。

※5出典:第18回 医師の働き方改革の推進に関する検討会「医師の勤務実態について 週労働時間区分と割合<病院・常勤勤務医>」令和5年10月12日

DXは必至。BPO・アウトソースも対処法の1つ

2024年問題の解決にはさまざまな取り組みが必要ですが、人材不足の課題にはBPOを活用するのも1つの方法です。たとえば、書類作成やデータ入力などの事務作業や採用活動などバックオフィス業務をアウトソースすることが考えられます。

外部のプロにアウトソースすることで、人材不足の解消だけでなく、業務の効率化や生産性アップにつなげることもできます。

またITツールを導入して業務を効率化するなどDXも必至です。IoTやクラウドサービスを使えば、業務によってはリアルタイムの情報共有や作業の遠隔指示ができ、指示・管理の人数や負担を減らすことができるかもしれません。

もちろん、業界や業務によっては特定の資格が必要でアウトソースしづらかったり、セキュリティ懸念からスムーズにDX化が進められないこともあるでしょう。最初からすべての業務のアウトソースやDX化を目指すのではなく、できることから切り出して取り組むことが一歩ではないでしょうか。

『Alternative Work』を運営する株式会社キャスターでは、日常業務から専門領域まであらゆる仕事をアウトソースできるリモートアシスタントサービス「 CASTER BIZ assistant 」を提供しています。まずはお気軽にご相談ください。

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さくら もえMOE SAKURA

出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。

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