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増え続ける「スポットワーカー」のリスクヘッジをするのは民間?政府?それとも個人?

2022/12/21 Wednesday
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損保ジャパンが増え続けるスポットワーカー(ギグワーカー)向け保険を提供することを発表しました。

参照記事:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66606610W2A201C2EE9000/

スポットワーカーまたはギグワーカーと呼ばれる、いわゆる「単発で仕事をする人」は年々増え続け、現在760万人にものぼるという推定もあります。

日本全国に存在し、ポピュラーな働き方とされる派遣社員の数が大体130-140万人前後と言われているので、その5-6倍存在することになり、実はかなり大きな市場です。だからこそ損保ジャパンもビジネスチャンスがあると感じ、参入したのでしょう。

まず、前提として、スポットワーカー向けの保険には2つのパターンが存在します。

1つは「本業はフルタイムで働きながら、副業でコンビニで働いている」など、どちら仕事でも雇用されている場合です。このような人が怪我をした場合、実は労災対象になります。しかも、2020年の労災保険法の改正によって、本業のA社ではなく副業先のB社での勤務中にケガをした場合、ケガをしたB社のみならず、A社でも手続きを行うことで、制度上労災が適用されます。

問題なのは2つめのパターン。スポットで働いた時の雇用形態が「業務委託」など、雇用でない場合です。この場合、個人事業主という扱いになるので還俗、労災対象にはなりません。

本来、政府が個人で働く人に対しても「万が一のためのセーフティネット」を張らないといけませんが、今の法律ではそれがないため、民間でカバーしようとした例が今回の保険です。

政府は「多様な働き方」を推進しているように見えますが、働く個人の安全を守るという観点において非常に脆弱なのが実際のところです。言い換えれば、副業や個人で働くことは推進するが、何かあった時は自分でリスクを負ってねといっている状態とも言えます。

本来は誰かがこのリスクヘッジをしないといけません。もちろん本業で雇っている・契約している会社が行う手もありますが、会社として従業員が個人でやっている事業や仕事の管理までできるかというと、あらゆる面で限界があるでしょう。こうした場合、その役割は政府がやるしかありません。

政府は今、雇用の流動化やそれを促進するための副業の推進などを掲げています。
であれば、そのような働き方をする人が日々安心して働く最低限のインフラ・セーフティネットを整えることもセットでやってほしいと思ってしまいます。

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※この記事は、2022年12月時点の情報をもとに執筆しております。

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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA

働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。

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