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実質賃金が前年比マイナス。あれだけ「賃上げ」と言っているのになぜなのか

2023/05/24 Wednesday
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5月23日、厚生労働省から2022年度の実質賃金について発表がありました。

参照記事:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA222EM0S3A520C2000000/

結果は、2年ぶりに前年比でマイナス。名目賃金は上がっているが、物価の上昇率がそれを上回ったという結果でした。

名目賃金とは、手当や賞与などを含んだ給与総額のこと、そして実質賃金とはそれを物価上昇率を加味したものです。つまり物価が上がった場合、賃金上昇率がその物価の上昇率よりも低ければ実質賃金はマイナスとなります。(今回がその例です)

実質賃金は名目賃金に対し、物価上昇率を加味して算出されるものなので、上がるにこしたことはないですが、本質的には名目賃金が上がり続けていくかの方が重要です。

このニュースで気になるのは2点です。

最近大手企業を中心に初任給を引き上げたり、春闘の満額回答があったりと賃上げのニュースは出てきていますが、多くの人が働いているサービス業の会社でそういった話はあまり出ません。知っているところでいうと、イオングループくらいでしょうか。

実際、金融やITなど高付加価値産業、製造業などの生産性が高い業界は賃金を上げやすいかもしれないません。しかし、そうではないサービス業などは、相当の経営努力や経営改善がないと賃上げ分を捻出するのも難しい会社も多いはずです。

かつ、ほぼ個人のように小さい規模の会社も多いので、より体力的に厳しいところも多いのではないかと推測できます。

一方、アメリカなどを見ると、人手不足が深刻なサービス業の時給がどんどん上がっていたりしますが、日本の場合は人手不足は深刻なのにそういった業界の賃金は上がりにくい。

この差はシンプルに「値上げ」をしているかどうかだと思われます。

人が足りない、原価も高騰している、では値上げします、という合理的な経営判断ができるアメリカと、そうじゃない日本の差が顕著に出ているのだと予測できます。

またもう一点は、名目賃金が上がったとしても、合わせて社会保険料が上がっているので実は数値よりも実際の感覚として苦しく感じる人は増えているのではないか、ということです。

この4月から雇用保険料、健康保険料、介護保険料などどれも10%前後上がっています。

社会保険料は税金ではないですが、実質的にはほぼ税金に近い側面を持っています。それなのに税金と違い、法律を変えなくても金額を変えられてしまうという仕組みには疑問が残ります。

取りやすいところから徴収する、というスタンスではなく、本格的に経済が成長し、自然と税収が増えるためにはどんな政策が必要か、という点にもっと取り組んでほしいと感じてしまいます。

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※この記事は、2023年5月時点の情報をもとに執筆しております。

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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA

働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。

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