三井不動産が宇宙関連産業を活性化させるために、一般社団法人を設立したと同時に日本橋に「X-NIHONBASHI」という拠点を開設しました。主に宇宙関連産業に関わるスタートアップ中心に、ここを本拠地として集まってもらい、産官学で宇宙関連産業を盛り上げることを目指しているようです。
参照記事:https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2023/0213/
このニュースを見て、なぜ三井不動産が「宇宙産業?」と思った方も多いのではないでしょうか。なぜ不動産業である三井不動産が、特定の産業を支援するのかについて考えてみました。
考えてみると、以前から特定の街やエリアに同業の人たちが集結することで、その産業が活性化するというのはよくありました。例えば、秋葉原はいい例です。
秋葉原は電気街と呼ばれ、秋葉原にしかないようなPCのパーツ屋さんなどがたくさんあったり、そこでPCや電気に関する商売をやろうとする人たちが集まるようになりました。そうすると、電子類やPCなどが好きな人、こだわりを持つお客さんが秋葉原に集まってきやすくなり、結果としてその街にいるPCショップや電子パーツ屋などは儲かりやすくなります。よって、ますます同業者が集まり、周辺に卸を行うような関連業者が集まる……などという循環が生まれていきました。
今回の取り組みはその現代版というか、宇宙産業のスタートアップ版のようなものだと思います。
宇宙産業に関係するスタートアップを集めることで、そこと取引する会社やこれから起業する人も、せっかくならと日本橋の近くに集まることになります。それが盛り上がれば、日本橋近辺の物件が埋まりやすくなったり、土地の価値が上がったりなどが起こり得ます。
実は「日本橋」こそ、三井不動産が街づくりとして最も注力しているエリアなので、本業にもメリットがあるということなのだと思います。
今、会社を経営する上で採用やコスト面を考えてリモートワークにする会社も増えています。不動産会社としてはそれは逆風です。だからこそ、ただ魅力的な物件を作るだけではなく、あえて特定の産業の会社を一箇所に集める仕掛けを作ることで、街全体の開発を進めたり、土地の価値を上げることを考えているのだと考えられます。
以前から、鉄道各社が沿線の再開発や街づくりに注力してきましたが、大手ディベロッパーも競合になったことを意味します。今後、各社が競って「特定の産業の会社が集まる街全体」をデザインする取り組みが始まり、特色ある街があらゆるところにできてくるのかもしれません。
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※この記事は、2023年2月時点の情報をもとに執筆しております。
石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA
働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。