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日本の女性管理職の現在地。女性活躍が進まない3つの要因とは?

2025/04/22 Tuesday
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「女性活躍推進法」の成立から今年で10年。日本でも、女性活躍への意識は着実に高まってきました。しかし、「女性管理職」の割合はいまだ国の目標と程遠いのが現状です。改めて、女性管理職の現在地についてまとめました。

日本の女性管理職の割合は「12.9%」、他国と比べて低い

日本のジェンダー・ギャップ指数は146か国中118位(※1)と非常に低いことで知られます。そんななかでも、国が旗振りをして、女性の管理職登用を推進してきました。

例えば、内閣府はプライム市場上場企業を対象に「2030年までに女性管理職比率を30%に」という目標を立てています。また、厚生労働省は2024年11月、従業員101人以上の企業を対象に、女性管理職の比率を公表するよう義務付ける方針を示しました。

しかし、ビジネスの現場は、いまだ目標に程遠いのが現状です。日本企業で管理職(課長職以上)に占める女性の割合は12.9%(※2)と、他国と比べても低い水準です。TOP3のスウェーデンとアメリカ、シンガポールは40%を超えているなか、日本の低さが際立っています。

※1 内閣府「男女共同参画に関する国際的な指数

※2 独立行政法人 労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2024」就業者及び管理職に占める女性の割合

女性管理職が増えない「3つの理由」

日本では、どうして女性管理職の割合が少ないのでしょうか。主な要因を3つ挙げてみます。

見えない「ガラスの天井」が昇進の壁に

女性のキャリアアップを阻む原因としてよく挙げられるのが、「ガラスの天井」です。ガラスの天井とは、女性やマイノリティが、能力や実績があってもあるレベル以上の役職や地位に昇進できない“見えない壁”のことを指します。

一見、何の障害もないけれど、実際にはそこへ上がれない仕組みや無意識の偏見、組織文化、慣習などが存在し、昇進やキャリアの成長を妨げているケースは少なくありません。

なお、英エコノミスト誌が発表する「ガラスの天井指数」において、日本はOECDの29カ国中27位(※3)と非常に低い結果でした。日本以外には、韓国やトルコが低くなっています。

※3 キャリアジャーナル「賃金格差、日本は拡大─「ガラスの天井指数」が示した女性の“働きづらさ”」(2025年3月8日)

ライフステージの変化と重なり、係長候補になりづらい

労務行政研究所によると、日本企業で管理職に登用される平均年齢は、係長クラスで35.5歳、課長クラスで41.8歳、部長クラスで49.3歳です(※4)。

係長に登用される30代前半は、出産や育児などと重なる人が多い年代といえます。最近は男性の育児休暇の取得率も上がってきてはいますが、それでもまだまだ母親が長期の育休を取り、父親が先に復帰するというパターンが多いのが現状です。管理職に抜擢されるタイミングで、会社にいないということからタイミングを逃している可能性もあります。

育休を取ったことで昇進やキャリアアップが遅れることは、俗に「育休ペナルティ」と呼ばれ、そのような構造が起こらないよう企業側でも取り組んでいく必要があります。

※4 労務行政研究所「等級制度と昇降格に関する実態調査

男女ともに「管理職になりたい」意欲が低い

また、そもそも男女ともに、一般社員の昇進意欲が低いことも理由として考えられます。ある調査では、「現在の会社で管理職になりたい」人は2024年時点で17.2%。2021年以降減り続けており、とくに女性は男性よりも低い状態(※5)です。

別の調査でもほぼ同様の結果が出ています。管理職になりたくない、なれない理由としては、男女ともに「ストレスが増える」「責任が増える」「自分には管理職が向いていないと思う」などの回答が上位(※6)になりました。

※5 パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査 2024
※6 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「女性管理職の育成・登用に関する調査概要

女性の昇進を阻む「インポスター症候群」

上記で挙げた理由から、女性管理職を増やしていくためには制度や施策、環境づくりなどの「外部」からの支援に加えて、前向きな気持ちや自信、意欲を持てるように自身の「内面」が変化することが必要だとわかります。

とくに女性は「自己評価が低い」傾向があるとも指摘されています。例えば、仕事で成功しても「たまたまだ」と考えてしまったり、自分は実力以上に周囲から評価されているかもしれないと、違和感や罪悪感を持ったりすると言われています。

このように考えてしまうことを「インポスター症候群」と呼び、以下のような特徴が挙げられています。

  • 自分を卑下し、過小評価する
  • 新しい挑戦やキャリアップを避けたがる
  • 成功することに対する不安が強い

実際、東京・丸の内で働く女性の46.3%がインポスター症候群の自覚があるという調査(※7)もあります。海外では、ミシェル・オバマやエマ・ワトソンも、インポスター症候群に悩まされたと公言しています。インポスター症候群は珍しい現象ではないのです。

※7 ヴィエリス「「インポスター症候群」に関するアンケート調査

女性管理職が少ない背景には、企業側の無意識の前提や組織の構造、そして働く人自身の意識が複雑に絡み合っています。“少ない”という事実に警鐘を鳴らすだけでなく、“なぜ進まないのか”に着目し、社会全体で問い直す時期に来ているのかもしれません。

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さくら もえMOE SAKURA

出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。

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